関西じつわ表紙イラスト集   大阪造幣局  ホーム

 環状線桜宮駅は桜色に染まっていた。駅員に造幣局の場所を聞く。いつものことながら、親切丁寧に教えてくれる。

 桜の季節になると、造幣局の通り抜けがある。行ったことがない。造幣局は何となく犯罪の臭いがする。周囲をうろうろしていると捕まりそうな気がする。お金を造っている工場へ行くわけなのだから、冷静でいられない。

 通り抜けといいながら、全員が造幣局を襲ったらどうなるんだ。従って犯人に間違われたくないので、この場所は避けていた。

 桜宮駅から二つ目の橋を右へ、と教えられたとおり、その橋を渡った。櫻橋と書かれていた。散歩中の老夫婦に聞くと「この橋は銀橋や」と、これまた丁寧に教えてくれる。

 見渡せば、大阪城、銀橋、造幣局と、もう絵はがきに書いたような大阪の風景が展開する。いぶし銀のような光を放つ銀橋を、どれだけの数のカップルが、ホテル街へ向かったことか。ふとそんな雑念がよぎる春先だった。