小説 川崎サイト

 

空き聖地

川崎ゆきお




 ヘチマやカボチャ、瓜もある。蔓が伸びる雑草もある。ジャングルのような庭だ。
 その中ほどに何も植わっていない場所がある。畳半畳ほどだ。そこだけ手入れされていることになる。黒い土がそこだけ見えている。
 この屋の主は老人で、病気がちのようだ。
 夏場暑いので、庭をジャングルにしたようだ。
 老人は庭に面した和室を使っている。ほかにも部屋は四つほどあるのだが、南向きのその部屋が気に入っている。
 冬場は暖かくてよいのだが、夏場は厳しい。それでも庭を見ながら暮らしていきたいようだ。
 庭の中にある半畳の場所は老人が作ったものだ。雑草の根が通っているのか、新たな茎が土の中からでてくる。
 根はかなり深く抜ききれない。そのため、でてきた茎をつみ取る程度だ。
 一週間に一度、つみ取るのを仕事にしている。
 ある日、孫が遊びに来て、その半畳の空間を発見した。
「あそこに円盤が着陸したの」
 孫は円盤の本を読んだのだろう。
「円盤なんて、飛んでこないよ」
「じゃ、どうしてハゲてるの?」
「あそこは聖地なんだ」
 孫は意味が分からないようだ。
「あそこ掘っていい?」
「それはだめだ」
「何か埋めてるの?」
 孫の質問は的を得ていた。
 二年ほど前、老人の愛犬が死に、庭に埋めたのだ。
 その上に犬小屋を置こうとしたが、祠に見えてしまう。別に神仏としてまつるつもりはない。墓でいいのだ。それより、土に返すだけでよかった。
 しかし、雑草が生え出すと、場所がわかなくなる。
 石を置いてもいいが、墓に見えすぎる。もう少し自然な方がいい。
 孫の質問に老人は答えなかった。
 翌日、孫がその聖地を掘り返した。
「おじいちゃん、何も埋まってなかったよ」
 老人は仰天し、庭へ走った。
 孫はそれほど深く掘らなかったようだ。
 
   了

 


2010年6月29日

小説 川崎サイト