小説 川崎サイト



魔性

川崎ゆきお



 いつの頃からか人と人、国と国との戦いから人ではない魔性との戦いがメインになってきた。
 巨大な帝国が世界を統治し、争い事はなくなり、平和な日々が続いていた。
 兵士と兵士が戦うことはなくなった代わりに、人ではない魔性との戦いが始まったのだ。
 敵は人や国ではなく、魔性との戦いの時代に入っていた。
 魔性、それは一種の自然かもしれない。台風や地震のような天災、自然災害に似た生き物達だった。
 彼らは生きており、帝国の町や国を占領していた。
 帝国軍の戦いはこの時期から魔性との戦いとなり、その武器や装備も魔性を想定して揃えられた。
 帝国の学者は魔性の研究を始めた。諸国で普及している宗教の中に現れる悪魔から発したものではないかとか、自然エネルギーの一種ではないかとか、この世ではなく、あの世から入り込んだ次元の異なる生命体ではないかとか、様々な見解に別れた。
 魔性の種類は多い。大型化した虫や小動物が群れで人を襲った。
 当然人々の暮らしは急変する。世界そのものが戦場化した。
 魔性のなかには超大型魔獣もおり、それを狩るハンターは英雄となった。
 魔性は野山のいたるところに棲息し、村や町を襲った。
 それまで職のなかった人々は競って魔性討伐隊や傭兵となり、そのため町から浮浪者は消えた。
 魔性のなかに、類人猿のような知恵のある魔性が登場し、国そのものを征服した。
 帝国の半分以上は魔性の国となり、魔性が世界を征服するのではないかと危惧された。
 帝国の王は魔性の王と話し合うことになった。
 魔性の王を見た帝国の王は驚いた。同じ人間の姿をしていたからだ。
 帝国の王は魔性の国を見学した。猿のような魔性がまだいるものの、多くは人の姿をしていたのである。
 そして帝国の王は魔性の国で殺された。
 魔性の王はその勢いで一気に世界を征服した。
 生き残った帝国の人々は旧人類と呼ばれ、奥地に隠れ住んだ。
 今度は彼らが野生化し、魔性化し始めた。
 
   了
 




          2006年7月2日
 

 

 

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