小説 川崎サイト

 

ワレ自爆セリ

川崎ゆきお


 破裂音と共に、左足が吹っ飛んだ。
「山田さん、やりましたねえ」
 重症を負った山田はにやりとする。
「この程度で済んだ」
「大丈夫なんですか」
「そのうち回復する。半年はかからんだろう」
 またもや破裂音。
 木下の片腕が吹っ飛んでいる。
「木下さんもやりましたねえ」
「数ヶ月の被害だ。大丈夫だ」
「しかし、後遺症が出ませんか」
「だから、数ヶ月は自重する」
 今度は破裂音だけで、何も吹っ飛んでいない。煙硝の臭い煙が少し立っただけだ。スーツの背に亀裂が入っている。
「近藤さんは、意外と緩かったですねえ」
「あまりいいものがなくてね。でも爆発させておかないと、気が済みません。今年はこれぐらいにしておきました」
「内田さんは」
 先ほどから爆破を見ていた内田は青ざめていた。
「や、やります」
「やりますか」
「最後を、見届けてください」
 内田はレジに走った。そして数秒後、大爆発を起こし、木っ端微塵に砕けた。
 内田の姿がない。
「ここにいます」
「勝負に出ましたねえ。内田さん」
「これで来年は苦しい戦いになります。覚悟の上です。しかし、気分はよかった。この余韻をしばらく味わいたい」
 男達はクリスマス商戦の最前線から立ち去った。
 そして、スーツの背中に亀裂が入っただけの近藤は、戦友と別れた後、別の店へ一人で行き、単独自爆で果てた。誰にも見られたくなかったのだろう。そして、最初の爆破では物足りなかったことも、理由の一つではなく、大部分だった。
 
   了


2012年11月19日

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