小説 川崎サイト

 

激流通路

川崎ゆきお


 店屋は立地条件が大事だ。都心のターミナル付近になると、人が行き交うため、客も多いと思いがちだが、そうではない。唯々通っているだけの人が多い。ここは通るだけ、と決めているわけではないが、ショッピングや飲食には向いていない通りがある。その気にならないのだ。
 また、地下街になると、誰も立ち入らないような人跡未踏地に近いフロアがある。よく言われていることだが、閑古鳥の巣だ。まだ閑古鳥がいるだけ間しかしれない。ゴーストタウンでも鴉ぐらい飛ぶだろう。ただ、餌もないような場所にカラスも用はないだろうから、カラスは寂しい場所という効果だろう。
 それとは別に激流のように流れる通りがある。駅と駅を結び通路にそれが多い。ただ、これはマップを見ても出てこない。地上と地下にまたがり、さらにその道は余地に近い。テナント内を横切るようなものだ。
 この激流は忙しい人達が少しでも近道をしたいが為に自然に通じた道だ。人の激流なのだが、建物を削るほどのものではない。当然だろう。しかし、壁の角などはこすれたあとがある。
 この激流通路は隣接するビルにまたがり、複数のショッピング街を横断する。いずれも狭い道で、お膳立てされた通りではない。
 その激流は、人が多いので、それに付いていけばいい。だが、朝が早すぎる場合や深夜になると、さすがに激流ではなくなるため、抜け方が分からなくなる。
 ビルとビルのぎ目のため、通路は真っ直ぐではないし、またエスカレーターの裏側に一度回り込まないと駄目だ。これは秘境にある滝の裏側に出るような芸当で、素人では無理だ。
 ここで言う玄人とは、できうる限り早く目的地へ行きたいために探し出した通路なので、急ぐ気がなければ、見えてこない道だ。
 当然その通路の左右には店屋がある。しかし、元来急いでいるため、無視される。これだけ人が多いのに、誰も入らないのだ。
 沿い行った激流が少し治まった通路に出ると、流れも穏やかになる。そして、狭苦しい通りほど客が多い。見せも小さく、中もよく見える。そして安い。
 そしてお膳立てされたしょっぷんぐが意の大通りは、意外と人も少なく、店屋も華やかに見えるのだが、見ているだけの客が多い。
 
   了



2013年3月22日

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