小説 川崎サイト

 

日曜日

川崎ゆきお


 富田は一年中日曜日なのだが、それでも日曜日が好きだ。日曜日という言葉が好きなのだ。これは味方だ。一番の味方で、援軍なのだ。平日は敵で、特に月曜日は難敵。そして一番苦手だ。
 富田は月曜日も当然休み。しかし月曜日は好きではない。月曜日という言葉が先ず嫌いなのだ。
 しかし、日曜日に善いことがあり、月曜日に悪いことがあるわけではない。
 しかし、本当に好きなのは土曜の昼から。これは小学生時代の思い出を引きずっている。当時土曜日は半ドンだった。つまり午前中だけの授業で、給食はなく、そのまま帰れた。それが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
 なぜかというと、遊べるから。自由になれるからだ。
 そのため、土曜日の下校時間が一番好きだった。この自由時間は明日もある。後ろにクッションがある。明日のことを思い煩うことはない。休みなのだから、学校はないのだ。
 そして、日曜日は楽しいが、明日のことを考えると笑えない。
 富田が日曜を楽しめるようになったのは最近だ。退職後なので、月曜日も休みのため、安心して日曜を満喫出来る。と言ってもいつもと変わらぬ暮らしぶりなのだが。
 ある日、富田は曜日を間違えた。日曜だと思っていたのだが実は月曜だった。これはあとで分かったことなのだが、世の中がどうかしたのかと思った。日曜なのに出勤風景や登校風景を見た。これは大変なことが起こって、非常招集でもかかったのではないかと。
 それに行き交う人の表情も厳しい。日曜顔ではない。これはすぐに気付いて、月曜であることを知ったので氷解した。
 逆に月曜だと思っていたのに、実は日曜だったこともある。この場合、街も人もにやけており、だらりとしている。本来なら、しゃきっとしているはずの月曜なのに。
 これもすぐに氷解した。世間はいつもと同じだが、富田の意識が一日ずれていた。
 曜日を間違うと、開いているはずの郵便局が閉まっていたり、逆に開いていたりする。すぐに何処かで気付くので、時間の問題だろう。
 富田はテレビをよく見ている。それで平日と土日の番組の違いで分かりそうなものなのだが、特に好きな番組はなく、テレビはつけているが、実際には見ていないことが多い。
 それよりも、最初の思い込みの方が優先するようで、色々なヒントを得ているはずなのに、曜日を間違える。
 土日と平日の違いは分かりやすいが、平日になるとごっちゃになる。水曜と木曜の違いも分かりにくい。漢字が似ている。
 その日、富田は街に出た。間違いなく日曜日だ。そして、日曜日の雰囲気を満喫した。日曜日であるだけでも楽しい。善い性分だ。
 
   了


2013年5月17日

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