小説 川崎サイト

 

不思議

川崎ゆきお


 不思議なこととは、人知では計り知れない現象を指すのだろう。それで想像だにしなかったことが起こると、不思議さを感じるのだが、後付けだが因果関係があったと納得する。
 風が吹けば桶屋が儲かる……などの話がある。遠いところで繋がっているのだろうが、最近桶屋など見かけない。実際にそういうことがあったのではなく、ものの喩えだろう。
 この不思議なことというのは、結構体験しているのだが、偶然として済ませている。その不思議さをもう一度やろうとしても出来ないため、あまり役には立たないのだ。ただ、一回切りでもいいので、不思議なことに解決した……などは歓迎される。運がよかったと。ただ、その運は一回切りで、再現できないだろう。今度もまた、同じように上手く行かないためだ。
 また、不思議な現象を起こり、解決したとなると、それに味をしめ、不思議さに期待することもある。ただ、不思議を弄っても、何も出てこないし。弄りようがない。因果関係が遠すぎて操作出来ないためだ。
 世の中には不思議なことがある。それは分かっているのだが、何ともならない。
 実際には人知で分かっているのはほんの僅かかもしれない。ただ、何となく解明されつつある。だが、この領域の現実と、本当のリアルな領域での現実とは違うような気もする。文法が違うように。
 要するに現実に起こっていること全てが不思議なことではないかと。
 ただ、これを言い出すと、不思議を弄ってしまうことになる。不思議とのコンタクトは遠い。
 果報は寝て待てや、棚からぼた餅などは、実際には何もしないでいるうちに、善いことや解決策が向こうからやって来る。これは怠け者には非常に都合がいいのだが、何もしない方が逆に難しかったりする。
 それは因果の内か、因果の外かは分からない。因果の外とはまだ認知されていない領域だろう。そして、それは永遠に謎かもしれない。
 
   了




2013年6月2日

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