小説 川崎サイト

 

健康維持

川崎ゆきお


「最近、どうですか」
「寝入りがよくて、目覚めがいい。これが一番かな」
「そこまで来ましたか」
「え、何がですか」
「最近の様子ですよ。様態じゃなく」
「ああ、だから元気で過ごしていますよ」
「その元気で、何をなされているかです」
「さあ」
「じゃ、食べて寝て、それだけですか」
「これが、なかなか難しいのです。今でも困難なことがあります。まずは金がなければものは買えない。落ちていませんからねえ、食べ物は。それに毎日毎日なのでお金がないと、無理です。今日の分だけじゃだめでしてねえ。ずっと食べていけるだけのお金が必要だ」
「だから、どういうお仕事をされているのですか」
「次は寝ることだ。これは寝付きが悪い日がありましてねえ。昼間と関係しているのか、妙に気が立って寝付けない。だから寝付きの良さは、昼間の行動にある。精神状態にもある。当然健康状態が大いに関与しております。体調の良いときは、昼間よく動く。だから、寝付きやすい。疲れてね。悪いときは、寝たり起きたりで、起きていても動きが怠慢だ。そして夜になっても眠れない。昼間充分寝ていたりしますしね。だから、寝付きは大事なんだ。薬を飲めば眠れますがね。これが逆に出ることもある。ものすごく目がさえたりしましてねえ。だから、薬は危ない」
「はい」
「そうですよ、あなた。これは大事な話なんだから、はいはいと聞いているのがいいんだ」
「はいはい」
「寝付きがよくても、寝起きが悪いときがある。寝ているとき、急に様子がおかしくなり、目を覚ますこともあるしね」
「はい」
「寝る、食べる。これが基本なんだ。まずは、ここからだよ」
「まあ、そうですねえ」
「食べるもの、これも大事だ。これは寝付きや寝起き、朝の便所にも影響する。消化器系をやられると辛いよ。腹に力が入らない。腹だけじゃなく、全体がおかしくなる。消化器系だけでは収まらないんだろうねえ。腹が減りすぎるとくらくらするのもそうだ」
「要するに健康の話ですね」
「健康維持、これは難しい。自転車で転んで怪我をした。これは内蔵はいいが、健康じゃない。すりむけているし、血も出ているし、腫れているし、痛い。歩くと足がおかしい。食生活に注意していてもそれだ」
「でも、そういうのはふつうに暮らしていても、ふつうにあるでしょ」
「ふつうのレベルを超える事故なんかに巻き込まれると、健康も暮らしも、吹っ飛んでしまう」
「はあ」
「だから、寝付き、寝起きの良さだけが問題なのは、こんな平和なことはない」
「はあ」
「寝る前には食べない。夕食は文字通り夕方に食べる。胃が空になってから寝る。肉とかは消化に悪いので、夕食では食べない。朝か昼だ」
「気を使っていますねえ」
「腹が減りすぎて寝付けないこともあるから、食べる量は少なからず多からず」
「もう一度、聞きますが、それで昼間のお仕事は」
「それは大事だ。仕事をしないと、衣食住を維持できないからね」
「それで、どんなお仕事を」
「職種は問わずだ」
「え」
「何でもいいだろ」
「何もなされていないのでは」
「失礼な。ただちょいと言いにくいだけだ」
 
   了
 
 


 


2014年12月28日

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