小説 川崎サイト

 

オレンジゾンビ

川崎ゆきお


 普段からの立ち回り先は変化する。引っ越しや仕事先を変えた場合一変するだろう。ただ、立ち回る目的はあまり変わらない。場所やものが変わっただけで、目的は同じだったりする。毎日頂戴する食べ物も、米の銘柄や、惣菜は変わるだろうが、食べ物を食べることでは同じだ。
 また、徐々に変わっていく立ち回り先もある。用事がなくなれば、そこへは立ち寄らなくなる。また同じ用が近い場所でも果たせるのなら、そこにする。当然経済的な理由も加わる。高い個人喫茶を辞め、ファストフート系に代えるとかだ。
 当然人との接触で、行きづらくなったり、行きやすくなったりもする。大きな変化ではないが、小さな変化がいくつも重なり、数年前とは立ち回り先が違っていたりする。
 その立ち回り先への移動中、つまり通り道で最近佐竹はオレンジゾンビを見た。これは失礼な話だが、佐竹がそう名付けた人だ。よく見かけるのだ。オレンジ色の派手なコートを着、紳士帽を被った老人がゆるりと歩いている。誰よりも遅い。すれ違い様、そのコートを見ると、ポケットが多く、そして生地もよく、分厚い。それでいてシンプル。こういうコートは洋物だろうか。きっとブランド品なのだ。最初見たとき、外人ではないかと思ったほどだ。上背がかなりある老人のためだろうか。というより、外人でなければ羽織れないような派手なコートなのだ。その色がオレンジで、しかも非常に歩くのがゆっくりな人なので、オレンジゾンビと名付けた。
 そこは大きなショッピングモールで、佐竹はそこで買い物で入るとき、その道でよく見かけるのだ。さらに用事を済ませて出るとき、また出合う。ということは回っているのだ。ショッピングモールを取り囲む道を何周もしているのだ。
 その日は二度目撃した。佐竹はここへ立ち寄る時間は不規則で、同じ時間ではない。しかし、必ずオレンジゾンビと出くわす。二度目撃したことで、回っているのだと分かった。
 しかし、このオレンジゾンビ、立ち回りではなく、歩き周りだろう。
 
   了


 
 

 
 
  


2015年1月30日

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