小説 川崎サイト

 

夢の集い


 小島は最近集まりの夢をよく見る。集まりの夢の集まりだ。小島が集めたわけではないが、集中的にそんな夢が集まった。夢の中での集まりは、集会とか寄り合いのようなものだが、私的なもので、仕事上の会議とかではない。そういうものが終わってからの集まりや、当然仲間同士の集まりで、集会と言うほどのものではなく、何となくの集まり。
 だから、何かのあとの二次会、三次会も多い。小島はフリーランスのため、色々な業種の人達と仕事をする。そのため、飲みに行ったりなどの付き合いも多い。これは欠席するより、出席していた方が好ましい。色々な情報が得られるし、またそこで仕事が発生しないまでも、人脈を保てる。よく顔を出していれば、よく見かける顔としての認知度も出る。
 ところが今は引退したためか、その種の集まりは殆どない。たまに昔の仲間とバッタリと合い、少し雑談する程度。次に会う機会はもうないような。
 現実にはもうなくなってしまったことが、夢の中で補充されるかのように出てくる。毎晩見る夢は複数の人達と集まっている夢なのだ。
 場所は特定できないが、そこがどんな店だったのかは何となく分かる。有り得ないような行ったこともないような場違いな店ではない。また、あくまでもプライベートな場所で、会議室などではない。何かの流れで、そういう場所になだれ込んだとか、また行きつけの店だったりする。覚えている店もあるが、何処なのかが分からない店もあり、こちらの方が多い。
 それを思い出そうとするとき、誰が夢の中で出て来たかがヒントになる。その殆どは親しい間柄の人で、親友に近かったりする。
 ただ、仕事をやめてからは二度と会わなかったりする。プライベートだと言っても結局は仕事がらみなのだ。
 そういった夢で出てくるような集まりの中にいた仲間内の一人からメールが届き、あとは電話で、また集まろうという話になった。
 小島と同じようにもう引退した人もいるが、細々とやっている人もいる。だから同窓会のようなものだ。
 集まったのは小島を入れて四人。昔の懐かしい話ではなく、再結成しようという話だった。小島は複数のグループに所属していたが、あとの三人は元は同じ会社の人間だった。いずれも定年前にやめ、独立している。そして、所謂細々組だ。小島は完全に引退しているのだが、この中では一番顔が広い。それで、呼ばれたのだろう。
 この集いは、一度だけで、定期的に集まろうと言っていたが、それはなかった。それが数年前の話で、その後、その種の集まりはない。だが、リアルではなくなったのだが、夢の中で、始終集まっている。
 昨夜もその集まりの夢を見たのだが、二人は分かるが、残る一人がどうも思い出せない。そこは改札から近いだけの何でもない喫茶店で、待ち合わせでよく使っていた。この種の店は複数あり、それらがだぶっている。そのため、見たことがある店なのだが、何処にもないような夢の中のオリジナルな店になっている。他の店と混ざっているのだろう。
 小島は、ばりばり仕事をしていた頃のことは殆ど思い出しもしないし、感傷にも浸らないのだが、夢の中で出てくるのだから、いやでも思い出すようだ。
 
   了
 






2015年9月29日

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