小説 川崎サイト

 

想いが湧き出る


 何か考えているときや、思っているとき、別のことがふと思い浮かぶ。それは、あまり熱中して考えていないときか、また上手い考えが浮かばなくなったのか、その先が少し曖昧になったとき、飛び出すようだ。
 これは今、考えていることとは関連がなく、またそこからの連想ではなく、繋がりは殆どない。ふと思い浮かんだというのはよくあるが、何かを見ているときに多い。きっかけがあるのだ。
 それとは別に考え事をしているとき、飛び出てくる、このふとは、本当にいきなり来るような感じで、これは自然に思い浮かんだのだろう。そのきっかけに手掛かりはない。そのため、夢のようなもので、夢はリクエストできない。昼間の影響もあるだろうが、それもコントロールはできない。
 自律神経や、自分では動かせない筋肉などがある。それに近いものが思いにもある。何かを思い起こそうとか、思い出そうとして出て来たものではなく、勝手に湧き出たものだ。
 これは今思っていることが導火線になったのかどうかは分かりにくい。もしかするとランダムかもしれない。いきなりとか、ふとが怪しい。
 これは記憶の整理中、飛沫のように飛び出したのかもしれない。何が飛び出すのかはランダムだとすれば、思わぬものを思い出すことになる。
 これは寝付けないとき、何かを思い出したり、思い浮かべながらウトウトしているとき、先導していた意識とは別に、夢側からの作動なのか、別のものが取って代わろうとする。それに近い。これも思い浮かべているものとはまったく関係がなく、自然に湧き出たもので、そのストーリーに乗ると、不思議と眠ることができる。起きながら夢を見ているのではない。思い出が再現されているようなものだ。
 このふと思い浮かべてしまうことは、普通、雑念と言われている。当然雑念なので、雑ではないメインがあるわけで、その最中に雑念が来る。これが「腹が減った」とかなら、雑念としてはふさわしく、ただの雑念だ。何となく原因が分かる。また、今考えていることに対して反動的なものが出てきた場合も、それも正体が分かりやすい。
 そうではなく、関連が分かりにくいものが突然湧き出る。何故そんなことを、今思い浮かべたのだろうと考えるが、分からない。
 いずれもそれらが湧き出すタイミングがあり、その一つが、集中力が落ちたときだ。また、思い巡らせていることが、少し止まったときだ。
 その隙を狙って、思いがけないものが飛び出してくる。これは神の啓示でも、天啓でもない。
 これは余計なことを考えないで集中しているときにも出てくる。さらに同じことを繰り返しているときとか、単調なときだ。その殆どは雑念だが、この雑の中に、たまに拾い物がある。
 
   了


2015年11月8日

小説 川崎サイト