小説 川崎サイト

 

地球防衛隊


 住の洞は住道の向こうにある。住道は市街地で住の洞は山間部に少し入った場所だが、谷はそこで行き止まり、その先はない。住道はベッドタウンで、この辺りの山は中腹まで宅地となっているが、住の洞は渓谷なので、何ともならなかったらしい。そのため、昔のままの地形を保っている。
 昔は住道がベッドタウンの端だったが、今は山を越え、そこにニュータウンができている。山を削り取り、大きな道を通したためだ。また、山の中腹にトンネルが掘られ、山向こうへも出られるので、ベッドタウンが拡がった。
 要するに住の洞は市街地のすぐ近くにある。住の川の源流だが、この川は平野部に流れ込み、すぐに大きな川と合流するため、住の川箇所はほんの僅かだ。また市街地に入ると、ただの排水溝規模になる。大雨で増水してもしれているようだ。
 平野部の山沿い、太古から開けた場所なので、当然古代人の墓がある。前方後円墳などができる以前の、カメに入れた程度の墓だ。
 それが山沿いから渓谷にかけて蛸壺のように点在しているため、住の洞と呼ばれている。自然にできた洞窟と、人工的にできた洞窟が混ざり合っている。しかし、特に珍しいものではなく、何の保存もなされていない。
 住の洞の入り口である住道の町に地球防衛隊や宇宙防衛軍など、様々な団体さんが泊まり込んでいる。その数、二十人程度だろうか。宇宙忍者部隊の住道支部があったため、そこの隊員が宿を手配したようだ。
 一方地球征服を企てる悪の星軍も十名程度。これが住の洞に現れ、住道を襲い始めたのだ。地球征服の第一歩として。
 まずはイギリスからサンダーバード一号がすぐにやってきたが、乗っているのは二人だ。
 それでは足りないので、地球防衛系のヤマトとかサクラとかの諸団体で戦うことになる。
 住の洞にはワープ磁場があるらしく、昔から住の洞の洞窟へ入ると、耳鳴りがひどくなると言われている。
 古代人が住んでいたという洞窟は、実は異星人のワープポイントだったのだ。
 それで、住の洞での戦いになるが、悪の星軍は人数的に不利なため、出てはすっこみ、出てはすっこみを繰り返した。その姿は蛸に似ている。
 これで何度目の地球征服だろうか。結局地球側の混成部隊に破れ、またもや撤退した。それらの戦いは住道の市街地ではなく、住の洞の人があまり来ないところでやっていたため、世間の人は地球が征服される戦いがあったことも知らないようだ。
 悪の星軍は住の洞から住道市街を血祭りに上げるのが地球征服の第一歩なのだが、今回もそれができなかったようだ。
 次の地球征服は来月になるとか。
 
   了


2016年5月26日

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