小説 川崎サイト

 

宅配便は二度ベルを鳴らす


 室戸が昼寝をしているとき、宅配便が来た。すぐに起き、受け取った。時間指定ではないので、いつ届くか分からない。そういうときに限って留守のときがある。ほんの一時間か二時間、外に出ただけだが、留守は留守。今回は大事な品が届くことと、すぐに現物を見たいので、寝待ちした。午前中は来なかったので午後からだ。お昼頃、宅配便の車をよく見かけるし、いつも受け取るのも昼前後が多い。そのため、昼食後寝待ちを決め込んだ。
 その寝待ちが図に当たったのか、無事に受け取った。すぐに開封し、買った商品を見る。ただのケースだ。宝箱のようなケースで、これが欲しかったのだ。宝石を入れるわけではない。
 それで安心し、もう一度寝た。中に何を入れるのかを考えながら。
 昼寝の二度寝から起きると食べ残しのおかずがある。まだ寒い季節ではないので、急いで冷蔵庫に入れた。そこでチャイム。
 出てみると先ほどの宅配便。同じ人だ。そして、同じような箱を持っている。室戸はサインし、それを受け取った。
 開けると先ほどと同じ宝箱。これはどうなっているのだ。二つ買った覚えはない。それなら一緒に配達するだろう。
 何かの間違いかもしれないが、気になるのは同じ人が来たこと。サインをするとき、その箱の上に伝票を置き、配達員のボールペンで書くのだが、配達員が動かないように手で押さえるポーズも似ている。
 最初に来た配達員は何だったのか、いや、次に来た配達員の方が怪しかったりする。どちらかの配達員は実体がないように思えた。時間軸がおかしくなり、一度が二度になったように見えるのだろうか。
 しかし事実はどうあれ、宝箱が二つ手に入ったことになる。そして、伝票や段ボールの形を比べようと、自室に戻ったのだが、ない。自室が消えたのではなく、宝箱だ。また、取り出してすぐに寝たので、段ボールもそのままあるはずだが、ない。
 宅配業者が怪しい存在ではなく、最初に来た宅配は夢だったのだろう。そしてそれを開ける夢を見て、もう一度寝た。
 夢の中で手に入れた宝箱は持ち帰れない。最初から分かっているようなよくある話だ。
 
   了

 


2016年10月16日

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