小説 川崎サイト

 

今宵も月は出ぬそうな


 希望していたような、予定していたような未来はなかなか来ないようだ。未だ来ないので未来というのだろう。その未来は何等かの世界だ。未来世界と言うほどスケールの大きなものではなく、個人レベルでの話。
 その希望、欲深いものが多い。良く言えば理想的なもの。望んでいたもの。それがささやかなものであっても、逆に難しいかもしれない。
 夢と希望。似ている。しかし夢は希望ほどの現実性はないかもしれない。
 思っていたようにならないと、予定されていたものが消える。予定通り、予測通りに行かないことは日常的に経験している。思い描いていた未来とは違ってしまう。しかし、夢とか希望とかは変更できる。それで別のものを求めに行ったりする。未来世界が複数あるようなもので、それは個人の頭の中にある世界のため、切り替えることができる。個人の数だけ世界がある。
 そして、希望したようにはならなかった場合、その先の世界が途切れてしまうのだが、それを踏まえた上で、新たな希望を抱く。
 未来はどんな感じで来るのかというと、なし崩し的に来たりする。ある日、突然別の未来へ行くことになるようなことは希にあるが、それは余程のことが起こったためだろう。大災害や大病とか。
 これは過去を振り返るとよく分かる。昔やろうとしていたことなど痕跡さえなかったりする。それでも未来はやって来て、今がある。
 そして今の状況、資源のようなものだが、それを踏まえての希望をまた抱く。希望を抱かないと言うことも、また希望だ。本人が描かなくても人が与えてくれたりする。
 未来はなし崩し的にやってくる。何か色々と崩れ、壊れているのだが、新たに手に入るものもある。
 
   了

 


2016年10月18日

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