小説 川崎サイト

 

梅に雀


 大寒を過ぎて間もない頃。梅が咲き始めているのは春の先触れだろうか。寒い日が続いている中で、その日は珍しく暖かい。気温的にはそれほどでもないのだが、今までが寒すぎたのだろう。
 咲き始めた梅の枝に雀がとまっている。これは何だろう。梅に鴬は聞くが、梅に雀はあまり聞かない。それよりも雀は集団で動く。群を作って。それは家族だろうか。または親戚かもしれない。それなのにただ一羽だけの雀。これはカラスでもたまにいるが、年老いたカラスが群の連係プレイができなくなったので、単独行動でハトや雀に混じって、あまり好きでもないものを食べている。畑に降りてくるカラスは年寄りが多い。
 梅の枝に止まっているその雀もその口かもしれない。きっと老いた雀なのだ。白髪はないが、茶色の部分が少ない。
梅の花が甘いか酸っぱいかは分からない。梅干しが酸っぱいので、梅の花も酸っぱいかもしれないが、鶯などに聞いてみないと分からない。
 老雀である証拠とまではいかないが、それなりに大きい。小雀が好奇心で来ているのではなく、知っているのだろう。
 老雀にとり、梅の花は薬草かもしれない。もしかすると長寿の秘薬。若い雀は寿命など考えないが、老雀は少しでも長生きしたいのかもしれない。そこまで考えての行動とは思えないが、他の雀が他で何かをしているとき、ものすごく趣味的なことをしているように見える。
 梅の木に来る鳥はどれも小さく、そして地元の鳥ではない。この季節にしか来ないような渡り鳥だ。そのため、カラスは来ないし、ハトも梅には興味がないのか、もっぱら地面のものを狙っている。雀もその口なのだが、群をなして梅の木にやって来ることは稀。あるかもしれないが、あまり効率のいい餌ではないのだろう。
 だから老雀が梅に来るのには特別な意味があるはず。
 しかし、その雀、結構若かったりする。そして、この地の雀で、冒険者かもしれない。梅もいけるのではないかと仲間を呼ぶ前に試食しているのかもしれない。
 梅に雀の絵。あるような気がする。
 
   了
 

  


2017年2月3日

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