小説 川崎サイト

 

貧乏くじ


 最高の選択で絶賛される人と、最低の選択だと言われ、芳しい評価を受けなかった人がいる。いずれにしても選択しただけで、何もまだ始まっていない。選択を下しても、それは思っているだけ、考えているだけではまだ内の世界。外とは繋がっていない。これが何かを実行するための選択ボタンを押したのなら事態は動き、そのように展開していくだろう。
 選択した限り、いずれは実行するはずで、そのタイミングは今すぐか、またはそのときになってから。
 最高の選択といっても、何を選択したのかによる。まさか最高級の洗濯機を買い、それで洗濯した話ではないはず。しかし、これも選択だ。
 最高最低に関わらず、何かの事情で、どれを選択しても同じようなものになったとすれば、最高の選択者の方が落胆は大きいだろう。残念な選択、またはいい選択ではなかったと思っている人は、ほっとするかもしれない。どちらを選んでもスカなのだから。
 最高の選択は、そういった先のことまで読んでの選択だったのかもしれないが、現実はそうはいかない。
 最高の選択をした人は周囲も喜ぶ。それを踏まえた上での選択だったりする。その逆の最低の選択は、周囲は眉をひそめ、また軽蔑したり、もう期待をしなかったりと、悪い目に出る。また、その人らしからぬ選択だとかも。
 いい選択ではなかった場合、本人も周囲も期待しない。落胆こそすれ。
 しかし、それも選択肢の一つだ。ただ、普通は踏んではいけない選択なのかもしれない。それを敢えて踏むというのは何だろうと思ってくれる人は少ない。本人も面倒なので、くじでも引くように、適当に選んだのかもしれない。あまりやる気がなく、どうでもいいと思ったのだろうか。そういう人なら最初から誰も期待しないので、これは大丈夫だ。
 世の中はどこで逆転するのか分からないところに可笑しさがある。逆転なのだから、滅多にそんなことは起こらない。それを狙っての選択なども滅多にないだろう。所謂大穴狙い。
 しかし、下手なくじを引いた人の話も聞きたいものだ。決して成功談にはならず、平凡なものだったとしても。
 下手なくじ、これは貧乏くじを引くようなものだが、そういうくじは誰も引きたがらないはず。それにくじの中に「貧乏」と書かれているのかは分からない。おそらくないだろう。
 この貧乏くじ、相場で決まる。そのときは貧乏くじだが、時期が来ると別のものに変身しているかもしれない。
 これを化けるというのだが、化けやすいのは最低の選択をした人の方が確率は高いだろう。化けでもしなければやっていけない。
 
   了

 


2017年2月16日

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