小説 川崎サイト

 

雑草畑


 毎日休みのような日々を過ごしている竹本だが、急に本職が忙しくなった。良い事だ。しかし、日々暇を持て余しているわけではない。仕事はしていないが、色々と忙しい。仕事時間を他のものが占領しているため、仕事をする時間を作らないといけない。
 では、仕事以外の何をして暇を埋めているのか。これは何もしていない。が、何かしている。それなりにやることができてしまい、それが日課になっている。その中身はしなくてもいいようなもので、やめても何処からも苦情は出ない。
 要するにのんびりと過ごしていたのだが、その過ごし方が上手かったのだろう。時間が足りないほどだ。
 普通に仕事をしていたときは、一日のスケジュールは仕事中心で回る。一番良い時間帯を占有し、しかも長い。余暇時間は僅か。
 今は一番いい時間帯は昼寝をしている。そこを先ず解放しないといけない。昼寝なので、あまり移動できない。夕方前の昼寝は無理だし、午前中だと起きたばかりなので、体調でも良くない限り、寝られるものではない。
 ビジネス畑に雑草が生えたようなもので、今はその雑草がメインだ。そのため、雑草畑からビジネス畑に変えないといけないのだが、久しぶりの仕事は短期で、何日もかからない。だからせっかく上手く行っている雑草を抜くのは惜しい。どうせすぐに雑草畑に戻るのだから。
 しかし、本職は辞めるわけにはいかないし、断る理由はない。当然収入になる。これは良いことだ。
 しかし、一度呑気な暮らしをやると、なかなか頭が切り替わらない。そんなときに限って仕事が方々から舞い込む。当然引き受けているので、ますます苦しくなる。
 早速催促電話がかかってくるのだが、それがいいスタートになる。そして、そこから仕事を始めることになり、広い大地は仕事畑になってしまった。
 それからは忙しい日々が続いたのだが、それをやりながら、あの長閑な雑草畑に思いが行く。取るに足りないことをやっていた頃が一番良かった。遊んでいるようなものなので、当然だが。
 短期で終わると思った仕事が長期化し、すぐに雑草畑に戻せると思ったのだが、当分は無理なようだ。
 そして無機的な仕事をしながら、竹本は雑草畑に思いを馳せる。
 
   了



2017年3月20日

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