小説 川崎サイト

 

エイリアン

 
 エイリアン。異星から来た怪物のようなものだが、その防御方法を研究している博士が、急にあることに気付いた。太古にもエイリアンが来ていたのではないかと調べているうちに、それが分かった。
 この人類こそがエイリアンではないかと。
 それに気付いている研究者は他にもいる。また、何となくそうではないかと思っている人達も。それらの痕跡は儀式として残っている。その意味は分からないが、それが神仏化していたりする。
 しかしこのエイリアンには特定の形はない。中に入り込んでいるのだ。特に猿に。
 そして地球を征服したのだが、このエイリアンはただのローカルな生命体のようなものなので、神ではないし、宇宙の原理からは逃れられない。そんな大袈裟なことではなく、気候の変化や自然災害に対しては対応できない。
「人類宇宙人説。それはよくある話ですよ」
「我々そのものがエイリアンなのです。それを忘れている」
「長いですからねえ」
「そうか」
「だって、弥生時代や縄文時代の先祖を知っていますか。どんなに古い家系でも、それは難しいでしょ。たとえ残っていても、もう伝承されていない。うちのお爺ちゃんはこんな人だった、のようにね」
「そうですねえ。猿が人になりかけているあたりの記録などないですなあ」
「そうです。木から下りてきた時代は、こんな感じだったと、当時の思い出を子孫に残していないと言うより、子孫もそれどころじゃなかったのでしょうねえ」
「エイリアンにやられたのはそのあたりからですか」
「そうです。猿が先ず感染しました。いや、猿を選んで入り込んだのでしょう」
「他の動物もいたでしょ」
「恐竜です。しかし、これは気候の変化で亡びました。彼らも感染していたかもしれませんが、残念ながら気候には勝てない」
「はい」
「それで、気候の変化に強い体温調整のできる哺乳類を狙ったのでしょうねえ」
「はい」
「そして、モンスターのように猿は強くはありません。百獣の王は別にいるでしょ。だから猿は別の方法を考えた。肉体的な弱点を補うためです」
「道具などを使うようになったのですね」
「しかし、その道具の果ての果てにあるのが宇宙船です」
「はい」
「そして、宇宙に出て、ウロウロしている別タイプのエイリアンと遭遇するのです」
「その宇宙船に入り込んだエイリアンが地球に来ます」
「だから、防御方法を考えているわけです」
「物理的に叩けばいいだけでしょ。彼らは道具を使わないタイプだ」
「人を襲うエイリアンならいいのですが、そっと人に入り込んで、何食わぬ顔でいたりすると、これは怖いです。人類が作った道具をそのまま使えますからね」
「そのエイリアン、いつ頃来ます」
「さあ、いつでしょう」
「もう来ていたりして」
「ええ」
 
   了



2017年5月4日

小説 川崎サイト