小説 川崎サイト

 

夜中の目覚め

 
 夜中、目を覚ました高畠は、よくあることで、これはトイレだ。しかし、そうではなく、目が完全に開き、眠気がない。そんなことは滅多にないので、これは何だろうかと考えた。床についてからそれほどたっていないが、そこそこ眠っている。だがまだ半分ほどで、こんな時間に起きると、朝までが長すぎる。
 誰かが起こしたわけではない。灯りを付けると、室内はいつも通り。目が覚めるほどの大きな物音もしていないはず。ごく自然に目が覚めたのだが、起きた時間が不自然。
 季節は真冬。寒くて目が覚めることはあっても、すぐにまた寝てしまう。こんなにしっかりとは目は覚めない。また、まだもう少し寝ていたという気持ちもない。
 それでも早すぎるので、一応トイレに立ち、戻ってきて、また布団の中に入った。これは眠った方が得策。原因は分からないが、考える必要もないだろう。フライングのしすぎだ。
 しかし、眠れない。いつもならもっともっと寝たい方で、不眠症とは無縁。
 木下は仕方なく起きることにした。これは仮起きで、本気で起きたわけではない。再び灯りを付け、いつも起きたときのようにパソコンの電源を入れる。
 そしてウェブを軽く巡回。いつも見て回るようなところを覗く程度。ネット散策だが、決まったコースがある。
 煙草を取り出すと、コーヒーが飲みたくなった。冷蔵庫にアイスコーヒーが入っているが、それを飲むともっと目が冴えるだろう。それで昨夜の残りの水がコップに入っているので、それを飲む。本気で起きて、一日のスタートを切るつもりはないので、着替えもせず、ストーブを強くして座っていた。
 体調が悪いとき、夜中に目が覚めることがある。今夜と同じように。そんなとき、一度起きると、すぐにまた眠くなる。そのコースに乗ろうとしていた。
 ところが眠気が襲ってこない。しかし、頭はそうだが、体は眠り足りないのか、疲れてきた。
 これはいいタイミングだと思い、パソコンの電源を落とし、さっと蒲団に入った。
 眠気はないが、強引に目を閉じた。その状態でも映像がある。模様のようなものが動いており、それが人の顔に見えだし、さらに見続けていると、非常にリアルな顔になっていく。しかも怖い顔。これは体調の悪いとき、たまに現れる。解決方法は目を開けること。それで怖い顔は消える。そして再び目を閉じると、また模様から始まる。そのあと人の顔になる手前で、さっと目を開ける。
 これを二三回繰り返していると、もう模様も出なくなる。
 そのうち夢の船が来ているのか、自分の意識ではなく、夢の意識が侵入しだし、そのまま持って行ってくれる。
 そして朝方の岸壁に無事寄港したようだ。夢の意識は消え、自分の意識に戻る。
 時計を見ると、寝過ごしている。途中で起きた時間がプラスされたのだろう。
 少し遅れたがいつもの朝を迎えることができた。
 夜中、急に起きてしまったのは何だったのかは今も分からない。
 
   了
 


2018年1月17日

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