小説 川崎サイト

 

見に来ただけの人


「様子見で一寸来たのですがね。いますか」
「いると大変でしょ」
「まあ、そうですが、チラッとでも確認できれば」
「用事もなしに、見に来るものじゃありません。それにどこに出るかも分かりません」
「でも、この先の路地が一番多いのでしょ」
「発生源ですから」
「そうでしょ」
「しかし、ここから既に出て来ているかもしれません。だからこの周囲。全部危ない」
「でも、今、見た感じ、いませんねえ」
「危険なので、戻った方がいい」
「でも、既に出て来ているのなら、戻り道も危ないわけでしょ」
「外出は控える方がよろしい」
「はい」
「何も用事がなかったのでしょ。外に出るような」
「これが用事です。出たかどうか、見るのが」
「この時間帯は危険です。もう少し立てば、今日はもう出ないはずですから」
「しかし、今日は見かけないのでしょ。だったら、既に出ているのですよ。見付けられないだけで」
「その可能性は大いにあります」
「すると、奴らは今まさに戻りがけじゃありませんか」
「そうです。しかし毎日出るとは限りませんから」
「もし戻って来るところなら、ここは通り道ですよ。ここにいると危ないのでは」
「ですから、戻って来ることも警戒しつつ、監視しています」
「それはご苦労様」
「どちらにしても用もないのに外出は控えてください。この時間だけですから」
「はい、分かりました。ところで」
「何ですか」
「あなた誰ですか」
「見に来ただけです」
「じゃ、同類じゃないですか」
「はい」
 
   了

 



2018年3月6日

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