小説 川崎サイト

 

巫女在籍の多い神社


 里の山際にある神社は周囲は森で覆われ、何処にでもあるような造りだが、社殿の横に建物がある。神主の家にしては規模が大きすぎる。由緒のある神社かといえばそうでもなさそうで、古いことは古いのだが村の神社ではない。つまり氏子は村人ではないし、氏子そのものもいないようだ。村の神社は別にあるので、やはり何らかの謂われがあるのだろう。
 この神社には神主はいない。村の神社なら不思議ではなく、氏子総代とか、誰かが回り持ちで神主をやっていたりする。
 神主や氏子ははいないが巫女が大勢いる。神社横に建物があり、これがかなり大きいということは先ほど述べた。おみくじ売り場のようなものがあり、アイテム類が売られているが、ほこりをかぶっており、あまり売れていない。
 しかし、向こう横町の煙草屋の看板娘のように巫女が常に常駐している。ここを訪ねた人なら分かるが、行く度に違う巫女がいる。それほど参拝客もいないので、呼び鈴を押さないと売り子の巫女は出てこないが、おみくじを買うのは参拝客ではなく、巫女。
 しかし、よく見ると若いことは若いが、話し出すと小娘ではないことが分かる。
 そしてしばらくして行ってみると、以前いた巫女達はもういなくなっている。一日だけの巫女もいる。巫女を必要とするような行事はこの神社にはないが、神社ではなく巫女が行事なのだ。
 村人は参拝に来ないが、例外もある。
 問題は社殿でではなく、その横にひっそりとはしているものの、かんなびた建物があり、こちらの方が社殿より実は立派。その入り口は先ほど説明したおみくじ売り場。
 実はこのおみくじ、参拝者が巫女から買うのではなく、巫女がおみくじを買うのだ。そのおみくじは非常に高い。そしておみくじを買うことで、巫女になれる。おみくじには文字が書かれている。これは一人一人の巫女が書いたもの。
 祭られている御神体の神は、ムスビノミコト。もうこれで、どういう施設なのかが分かってしまう。
 その起源は戦国時代らしく、ある領主が作ったのがきっかけらしい。この時代の兵士はほとんどが農民、村人なのだ。この時代の要望は江戸時代になると消え、別の要望に切り替わる。跡取り息子がいないとかだ。
 同じようなものとしてお籠もり堂がある。お寺系だが、その神社系もあるのだ。
 
   了


2018年3月30日

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