小説 川崎サイト

 

貴種流転談


「この罠が成功すれば敵を倒すことができる。これが最後の戦い」
「元々王子様がこの国の正統な後継者、元に戻せますねえ」
 国王に力がなく、その家来に乗っ取られ、王はただの操り人形。それだけ力のある家来がいたのだろう。この家来こそが王のようなもの。
 王子は幼い頃島に流されたのだが、正統性を訴える少数の家来に助けられた。艱難辛苦の末、反撃に出たのだが、その手が汚い。
 毒殺やだまし討ちを繰り返し、徐々に敵の勢力を削いでいった。
 最後の戦いは敵の仲間割れを狙い、これも様々な汚い手を使い、最終段階に達した。
 そして敵同士が戦うことになり、国王の周囲にいた主だった家来は亡び、国王を操っていた大物の家来も同士討ちの最中、刺客の吹き矢で暗殺された。
 しかし、その悪い家来が国を乗っ取っていた頃の方が安定していた。戦いはなく、平和。外敵も襲ってこなかった。それなりに繁栄していたのだ。
 ところが王子が国王になり天下を取ってから世は乱れた。本来の正統な後継者があとを継いだのだが。
 誰もがこの後継者を恐れた。旗揚げのときの初期メンバーが先ず逃げ出した。遠島先から王子を救い出した人達だ。当然その後も手柄を立て、功臣となったが、すぐに職を辞し、地方へ戻った。
 それはこの後継者のこれまでのやり方を知り尽くしていたからだ。姑息な手が多く、だまし討ちや、仲間割れを狙っての工作、そういうのを見てきただけに、この後継者のやり方を恐れた。
 敵だった実力派の大物家来は大人物で、正統派。戦いも正攻法。汚い手は一切使わなかった。
 そして後継者は王になるが、従うものは少なく、国は荒れ、外敵の侵入を簡単に許し、滅ぼされた。
 
   了

  


2018年4月18日

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