小説 川崎サイト

 

神と悪魔


「正義が悪を作る」
「ほう」
「正しきものがあるから悪しきものが出る」
「逆じゃないのですか」
「順があるから逆も出る」
「ほう」
「神を作れば悪魔も作ってしまう」
「では逆を行けば」
「悪魔を作れば神が産まれる」
「そんな単純な」
「最初は混沌」
「はい」
「正しきも悪しきもない」
「人が作るわけですな」
「最初は正しきものというか、神や仏に先立つものがあった」
「正しいものが先にあったと?」
「いや、正しきものはあとから来たが、その正しきものとは、実は悪しきものだった」
「悪しきものとはなんですか」
「悪いこと一般」
「単純ですね」
「いやなこと、まずいこと。天災や災難。何でもいい。困るようなことじゃ」
「はい」
「それを抑えるため神仏ができたわけじゃない」
「では神仏は何処から」
「悪しきものから」
「え」
「悪しきものを神仏とした」
「そんな」
「リアルなのは混沌。正邪兼ね備えし世界。良いも悪いもごっちゃ。聖俗も」
「では神とは悪魔ですか」
「悪魔が神でもある」
「それじゃまとまりませんねえ。規律というか、構図が分からなくなります。善悪の基準がなくなります」
「それがリアルな世界で、わしらが住む世界。神にもなれば仏にもなるし魔物にもなる。君もたまになっておるじゃろ」
「そこまで極端に変化しませんが、その幅は少ないですが、多少はその面が」
「善人の怖さ。悪人の優しさ」
「はい」
「鬼の目に涙」
「はい」
「仏の顔も三度まで」
「次は仏じゃなくなるわけですね」
「いずれも普段から見知り、体験していることじゃないか。わざわざ言うほどのことではない」
「はい」
「金を借りるときはエビス顔、催促すると仏頂面。まあ、人は仏にもなれば鬼にもある。当たり前の話で、よく聞く話じゃないか」
「今日のお話は、分かるようで分かりません」
「混沌としたか」
「しませんが極端です」
「中間は各々が埋めればいい」
「あ、はい」
「たまには自分で考えろ」
「はい」
 
   了


2018年6月5日

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