小説 川崎サイト

 

渡らずの踏切


 田んぼの中を電車が走っている。別に珍しい光景ではない。日本中至る所にあるだろう。鉄道が自動車に変わり、廃線になった路線もあるが、その町というよりも村を突き抜けて走る線路は本数は少ないものの、まだ無事。
 畦道程度でも踏切がある。その数は結構多いが、渡る人は少ない。
 その中の一つの踏切に関して都市伝説がある。場所は田舎の村。都市ではないが、時代が新しい。つまり時代劇ではなく現代劇。
 その伝説とは大袈裟なものではない。一行で終わるような話なので、そんなものは伝説とは呼べないが。
 話は簡単で、渡らずの踏切。踏切待ちが長くて渡れない開かずの踏切ではない。踏切待ちなど希な路線なので、滅多に待つことはない。渡れないのではなく、渡ってはいけない踏切。
 ではどうして渡ってはいけない踏切なのか。この踏切で以前事故があり云々の話はないので、それに乗っかることもできない。
 では何故渡ってはいけないのか。電車さえ来ていなければいつでも渡れる。しかし、土地の人はその小径の踏切を使わないで、その横の踏切を渡る。避けているのだ。そのため、最初からその小径を使わなかったりする。線路沿いの道は踏切を渡った側にある。そのため、渡らないのなら、そこで行き止まり、バックするしかない。そのため、用事があるときは、最初からその小径を避け、別ルートで行く。
 ただ、線路沿いの道がある方角からなら渡ってもいい。逆が駄目なだけ。
 都市伝説は実体がない方がいい。また原因などの中身がないほうがいい。「渡ってはいけない踏切」それだけでいいのだ。
 では渡るとどうなるか。
 別の世界に入ってしまう。
 しかし、トンネル抜けや、ドア開けなら、前方が見えていないので、急に風景が変わるのだが、踏切は見えている。そのため、一つだけ条件がある。
 踏切待ちをしたあと渡ってはならないと。
 その踏切待ち、滅多にない。その滅多にないことと偶然遭遇する。昔は長い長い貨物列車などが通過するときはかなり時間がかかった。そして前方の視界はほぼ消える。
 別の世界。しかし、どん前は見えないが、向こう側の空ぐらいは見えている。
 だから渡っても異界ではない。田園風景がそのまま続いている。しかし、そのあと、少し変化があるようだ。しかも悪い風に。
 場所も人も変わらないので、異界ではない。しかし、渡ってのち、今までの生活世界から比べれば異界となるらしい。
 
   了

 



2018年7月8日

小説 川崎サイト