小説 川崎サイト

 

急がば回れ


 急がば回れというのがある。直線で行った方が最短距離で早いのだが、わざわざ遠回りする。これは段取りを適当にすると、上手く行かず、逆に手間取ることになるので、その準備を整える意味でも、遠回りになるが、やるべき準備はやって進む方が逆に早いということだろう。
 また、急いでいるときほどゆっくりと行く意味もある。焦らず余裕を持って進めた方がいい。
 しかし世の中の多くのことは急いでいるときの方が多い。大事なことほど実は急ぎの用が多い。そして大事なことほど時間を掛ける必要があるが、大事すぎて、時間がかかりすぎる。いつまでも準備してられない。
 そして準備も熟考もなく、段取りもなく、下調べもなく、周辺への目配りもなく、後先考えないでさっとやってしまったときの方が意外とよかったりする。急いでいるので考えている余裕がない。もの凄く短絡的、目先だけ。と思われがちだが、バイパスで繋げているのかもしれない。近道だ。
 過程を省略して仮定を強引に持ってくる。仮定や仮説なので想像に近く、空想に近いかもしれない。裏付けを取っている暇がない。
 また、急を要するとき、結構テンションが上がる。頭の回転も速くなる。熟考の逆で直感で行くようなもの。これがバイパスだ。
 締め切り間際になり、もの凄いパワーを出すようなもので、追い詰められると出なかったものが出てきたりする。
 また何も出ないのに、出ないまま突っ込んだりする。これは無計画。何処へ向かうのかを決めて進んでいるわけではない。とりあえず動き出さないと間に合わないためだ。方角ぐらいは分かるだろう。
 火事場の馬鹿力というのもある。ただ、そういうシーンはハードで、二度とやる気は起こらないだろう。普段なら絶対にやらないこと。
 窮鼠猫を噛むというのもある。鼠もできれば逃げたいのだが、追い込まれて逃げ場を失うと、助かる方法はそれしかない。選択の余地がない。
 鼠は壁を囓る。穴を空ける。猫の歯より強いかもしれない。
 急がば回れは怠け者にとっては都合がいい。
 
   了
 



2019年1月25日

小説 川崎サイト