小説 川崎サイト

 

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 しばらく衰え、衰退の一途だったのが、戻りだしていることがある。これは何だろう。何が効いたのだろうかと竹田は考えた。
 その間、竹田は何もしていない。盛り返すための努力は最初の頃はやっていたのだが、焼け石に水のようで、無駄な努力。そんなことをしてもしなくても衰退は続いた。それで、もう諦め、放置していた。
 そこで考えた結果、時期のようなものらしい。どんなに混んでいて渡れない道でも、そのうち車列が切れる。そのとき渡ればいいのだが、待たないといけない。切れ目なく車が来ていると、これはもう諦めて、信号のあるところまで行って渡るだろう。
 しかし、時間帯がある。深夜は流石に車も少ない。待たなくてもさっと渡れることもある。
 それだけの問題だったのかもしれないと思うが、これは相手などがいる場合だ。竹田一人で完結していることなら、そんなことは起こらない。
 ただ、タイミングというのはある。いくら自己完結した世界でも、完全に隔離されているわけではない。世間は外ではなく竹田の内側にもある。
「ほう、復活したと」
「はい、寝かして置いたのがよかったのか、最近盛り上がってきています」
「それはよかったねえ。竹田君」
「はい」
「そういうこともあるのだ。何が起こるのか分からないのが世の中だからね。しかし良い事はあまり起こらない。だから今回はラッキーだよ竹田君」
「だから、盛り下がりっぱなしの研究でも続けるべきでしょうねえ」
「何処で火が点くか分からないからね」
「その後、放置状態でしたが、もうある程度出来上がっていましたので、それがよかったのかもしれません」
「じゃ、その研究を続けなさい」
「はい、勢いづいてますので、追い風、順風です」
 それで、その研究は凄い人気になり、竹田は大喜びしたのだが、それだけだった。
「どうかしましたか、竹田君」
「勢いはいいのですが、一円にもなりません」
「あ、そう」
 
   了

 


2019年12月5日

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