小説 川崎サイト

 

一つだけぽつりと


 そのものだけがぽつりとあっても、あまり価値がないのかもしれない。値打ちが分からないというわけではないが、それ以上のものではない。
 ところが同じようなものが並んでいたり、下位のものや上位のものがあり、ランクづけされていると、少し様子が変わってくる。付加価値というか、価値を決めるものが備わってくるからだ。一つだけぽつりだと、それが分からない。類似するものを探しても遠すぎたりする。既に違うものに属していたり。
 他と比べて凄いとかの評判も大いに価値に貢献する。凄くないといわれているものよりも凄いといわれているものへ行く。その凄さの中身に同意できる場合は、迷う必要はない。ただ、意味が分からないままの凄さもある。しかし、評判のいいものはいいものだということで、これも価値に貢献する。そのものの価値は人が決めるのだが、その人が自分ではない場合もある。
 類似するものがあり、並んでいる場合、そのもの以上の値打ちが生じる。
 逆にそのものだけがぽつりとあった場合、そのままの値打ちで、これが一番素朴だろう。値打ちを付け加えるものがないので。
 そのぽつりと一つだけの存在と、多くのものがある中で評判の高いものとの違いは、ほとんどなかった場合でも、高評価という飾りが効いて、値打ちは数倍の差になっていたりする。しかし、ぽつりと一つだけなので、比べるものがないはずなので、この例はあり得ないが。
 客観的なことよりも主観的なことを聞きたいと思うことがある。これはデータではなく実際の気持ちだ。そのため、それは人それぞれ。しかし、それぞれなのだが同じような感想が多いと、共通する主観になる。いずれそれは客観に近いものになる。ただ、主観なので、別の思いを持つ人も当然いる。それが圧倒的に少ないと、例外のような扱いになる。主観なので、好き嫌いが入るためだろう。
 一つだけポツンとあるものは、そういう影響は受けないが、何か淋しい。やはり飾り言葉が欲しいところ。評判になっていないだけでも価値は低いと見なされることもある。
 誰かが見出した価値に便乗する。自分が見出したわけではないが、その機会がなければ見出す機会もない。そして人が見出した価値、分けてもらった価値、教えてもらった価値だが、それに共鳴したり、自分もその価値を見出せた場合、教えてくれた人以上の価値を見出せることもある。
 逆に価値なしと評価されたものに、もの凄い価値を見出すかもしれない。これは穴狙いだろう。まだ誰もそのものの価値を見出していない。
 自分が思っているようなことを、他の人も思っていると、何故かほっとする。
 そのものが、そのものだけでぽつりと一つあるというのは結構孤独だ。
 
   了

 


2020年6月3日

小説 川崎サイト