小説 川崎サイト

 

午後の航海


 午前中に用を済ませたので、午後からはやることがない。吉岡は最近そんな生活をしている。
 そのため、午後からは暇。昼を食べてから次に何かをするとすれば夕食を作ること。それまで間がある。今から用意するのもいいのだが、それほど重要なことではない。ご飯が切れていても、夕食の準備のときに炊けばいいだろう。
 しかし電気釜はカラだが洗わないとご飯粒がくっついている。それだけでも洗っておけばいいのだが、そこまでする必要はない。さらにもう炊いて、保温にしておけば、夕食前にご飯を炊く手間が省ける。
 おかずを買ったり、作ったりして、さあ、食べようとしたとき、吉岡はご飯がないのに気付くことがある。電気釜だとおよそ一時間ほどかかる。早炊きもあるが、それはしたくない。すると一時間おあずけになる。待たないといけない。レンジで温めたおかずや、煮物や焼き物や炒め物も冷めてしまう。冷蔵庫から出してきたものも、入れ直すことになる。吉岡はそれを考えると、今から炊いておいた方が無難。
 しかし昼を食べたあとなので、もう食欲は消えているので、ご飯には興味がない。終わったのだから。
 そして昼ご飯が終われば、用はないが、吉岡は少し外に出る。そのへんをウロウロするのが日課。そのときスーパーなどに寄ることもあるし、切手を買うこともある。細かい話だ。
 だから午後からは用はないが、買い物とかがある。しかし、おかずがあるときは、別に買わなくてもいいし、切手も午前中の用事のとき、買えばいい。
 吉岡の午後は自由時間。いいことだ。時間だけは十分ある。しかも毎日。午後は好きなことをして過ごしてもいい。
 やるべきことは午前中に済んでいる。だから安心して遊んでもいいのだが、毎日だとネタがなくなる。また、いつでも行けると思うと、行きたいところがあってもなかなか実行しない。それほど行きたくはないのだろう。ネタと言えばネタだが、大したネタではない。行かなくても困らない。
 それで最近は昼食後、散歩から戻ってきたあと昼寝をするようになった。夕方まで寝るわけではないが、ここで一度落ちると、起きたとき新鮮なため。まるで二度朝を迎えるような。
 さて、今日はどうするか、と吉岡は考えた。まさか本気で夕食のご飯を炊くわけではない。その手もあるという程度で、ここで昼寝をするか、散歩から戻ってから寝るかを考えた。
 食べたあとは眠い。だから寝やすい。しかし、散歩から戻ってきたときは疲れてはいるがもう眠くはない。それに遅い時間に昼寝をすると、夜更かしになる可能性が高い。寝るのなら今なのだ。
 しかし、最近は寝ないで、吉岡は散歩に出ている。こちらの方が日課になっており、昼食後、すぐに寝るのは例外となってしまった。それは何故だろうかと考えたが分からない。
 今日は食べたあと、横になりたくなった。そして、そのまま少しだけ寝る。決して長くは眠れない。うとうと程度の日もある。
 だから寝やすいので、食後すぐの昼寝が有利なはずなのだが、散歩に出る。これは何故か分からないが、秋も深まり、日も短くなったことに関係しているようだ。昼寝後の散歩はすぐに暗くなる。
 いずれにしても日常の些事。好きなようにすればいい。大した違いはないし、ほとんど影響はないだろう。
 吉岡はそんなことを思いながら、眠くなってきたので、横になった。散歩に出るはずなのだが、眠気の方が勝った。
 たまにはそういう例外の日もあるようだ。
 
   了

 


 
  
 


2020年10月29日

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