小説 川崎サイト

 

減りゆくメンバー


「雨で集まりが悪いようですなあ」
「吉田さんは雨の日は来ない」
「平岡さんは来るでしょ。雨の日に来ていたことがある」
「足が悪いようです」
「昨日は来ていたが」
「あのとき、既に痛かったようです」
「で、今日は来ないと」
「はい」
「三村さんは雨の日も来ていたし、足も悪くない。しかし、来ない」
「三村さんは毎日じゃないですから、三日に一度ぐらいでしょ。顔を出すのは。それにじっと座っているだけで会話には入ってこない。だから普通に来なくなったんじゃありませんか」
「普通に来ないとはどういうことかな」
「良くないからでしょ」
「気分が」
「いえ、ここの状態が」
「あ、そう。それで自然に来なくなったと」
「以前は毎日来てましたからね。徐々に減り始めていました。そろそろ居なくなる頃かと思っていましたよ」
「自然消滅か。それが今日か。雨とは関係がないんだな」
「そうです」
「木嶋さんはどうだ。毎日来ていたじゃないか。雨の日でも。足も丈夫だし、会話には加わるし、話題を自分から出して、積極的だよ。何故来ない」
「残るは、一つですね」
「一つ」
「そう一つ」
「その一つとは何だ。その一つが原因か」
「そうです」
「何だろう」
「分かっているでしょ」
「何を」
「聞かなくても」
「ああ」
「それです」
「わしか」
「そうです」
「じゃ、わしが居なくなれば木嶋さんも来るのか」
「来るでしょ。その他の人も。雨が降っていても、足が痛くても」
「君はどうなんだ」
「来ているでしょ」
「そうだな。君はわしが原因にはなっていない」
「そうです」
「何故だ」
「そういう人間がたまにいるんです」
「付き合いのいい人だ」
「はい、それだけです」
 
   了



 


2020年11月6日

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