小説 川崎サイト

 

元気な悪夢


 芝垣は朝、すっきりと起きたのだが、目覚めが良かったわりには、何故か眠い。睡眠不足ではなく、頭が眠いのだろう。眠いというより妙に落ち着いている。
 これは良いことなのか、悪いことなのかは分からないが、調子が悪いわけではない。しかし良くもない。欲が湧かないのだろう。意欲というやつだ。意欲は意味がないと湧かない。意味に欲がある。
 これがない方がすっきりとしていて良いのだが、逆に元気がない。元気さは欲が絡んでいるためだろう。
 たまに心静かな日もあるが、夜になると急に活気づく。静かにしているときに、何かが溜まったのかもしれない。または休憩したので、元気になったとか。これは睡眠を多く取ったからではないし、身体を休めていたわけでもない。
 それだけのことだが、芝垣は落ち着かない。いつもの自分とは違うような。まさか聖人になったり、悟ったわけではない。執着が少し落ちたためだろう。実は芝垣そのものはその執着の中にある。
 これは何とかしないといけないが、頭が鎮まり、いい感じなのに、それが気に入らない。いつもの自分とは違い、運転方法が分からなかったりする。
 しかし午後からは回復した。元気になってきたのは欲が出てきたためだろう。執着も蘇ってきた。それに沿っての動きこそ、いつもの自分らしい動きで、そちらの方の操縦方法に慣れている。
 夜になると、ますます盛り上がり、これは暴走するのではないかと心配するほど。
 そしてなかなか寝付けない。頭が冴え渡っている。
 やっと寝入ることができたのだが、途中で何度か目を覚ます。悪夢を見ていたようで、それが何本立てかのお盆の怪談映画のように続いた。
 鬼に追いかけられている夢で、鬼の国から何かを盗んだようだ。それで逃げていた。持ち帰れば凄い金額になるものだが、夢の中なので、それが何だっのかは分からない。
 そのあとまた寝たのだが、今度起きると、もう朝で、いつもの起床時間になっていた。
 起きるとすっきりとしている。頭の中が空っぽになったように、何かが抜け落ちた。
 昨日の朝と同じ状態。
 しかし夕方からまた元気が出てきた。
 色々な欲が湧き出てきて盛り上がってきたのだ。
 このまま夜になると、怖いなあ、と芝垣は心配した。
 
   了

  


2021年2月3日

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