小説 川崎サイト



ある集会

川崎ゆきお



「さて、共同作業で、地域に何か貢献する活動についてですが。今日は皆さんと一緒に話を起こしていきたいと思います。先に結論ありきではなく、一から参加してもらいたいのです」
「参加費は必要でしょうか?」
「これは有志の方々による活動で、参加費とか、入会金とかが必要な団体ではありません」
「何をすればいいのかな?」
「ですから、それを決めていただきたいのです」
「誰が?」
「本日お集まりの皆様です」
「わしらが決めるのか」
「決めるというより、いろいろ案を出していただき、その上で決めたいと思います」
「つまり、よくある地域ボランティアだな」
「何がこの地域に必要なのか、そして私達メンバーがどんな貢献がふさわしいかを、一緒に考えて欲しいのです」
「河川敷のゴミ拾いとか程度だな」
「そんな感じで、どんどんアイデアを出してください」
「アイデアというか、そんな上等なものじゃないよ。よくあることじゃないか」
「いえ、独創的なアイデアでも結構です」
「独創的か」
「この地域にふさわしければ、なんでもかまいませんよ」
「しかし、何をやって欲しいかを言ってもらったほうが話は早いと思うよ。できることなら労はいとわないから」
「ありがとうございます。ですが皆さんの発案で決るほうが、よろしいかと思いまして。つまり、押し付けではない活動ということで」
「しかし、全員参加は難しいだろ」
「参加できる人だけでいいのですから、全員参加の必要はないかと」
「困ったなあ」
「その困ったです。この地域で困ったことがあると思います」
「バスの本数を増やして欲しいなあ」
「ここに集まっている皆さんでできるアイデアでお願いします」
「診療所があったんだが、なくなったんだ。困った」
「それも、皆さんができる範囲でお願いします」
「コンビニがあればいいなあ」
「それも、皆さんでは」
「本当に困っていることは無理か」
「皆さんが力を合わせばできることでお願いします。小さな力でも集まれば何かできると思います」
「誰が小さな力だ」
「あ、失礼しました」
「わしらは暇で困っているんだから、この集まりだけでも十分だよ」
「そうそう、毎晩集まろうぜ」
 
   了
 
 


          2007年9月15日
 

 

 

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