小説 川崎サイト

 

足止め


 吉田は足止めを喰らった。食べたわけではないが、それを飲まないといけない。
 いつもの日程が狂う。これが気に入らない。それに曜日も悪い。日曜だ。閉まっている場所もある。これだけでも足止めではないが、そちらへは行けない。しかし、別の場所があるので、問題はない。
 だが、その場所は遠い。その往復時間で、約束の時間に間に合わない。
 いつもなら、往復後、十分間に合う。それができないので、外に出られない。それを吉田は足止めと言っている。別に外出ができないわけではないが、行く場所がない。
 いつも行く場所が消えても代わりの場所があれば問題はない。日曜日は、そういうふうにしている。ところが、それをすると、戻る途中で既に約束の時間になっている。
 だから、家にいるしかない。同じことを家の中でやればいいのだが、外でやりたい。ずっと部屋の中にいるため、頭の切り替えができない。
 しかし、切り替えようと思えば、切り替えられるし、外に出る必要も実際にはない。ただの習慣なのだ。
 そんな細かいことを抜きにして、約束事があり、時間を縛られるのが吉田は嫌なのだ。日常のペースが狂ってしまう。それが是が非でもやらないといけにことなら別だが、どうでもいいようなことで、やってもやらなくてもいいようなことで、日時が決まってしまい、縛られるのを嫌う。
 今日は駄目だが、明日ならいい。というものではない。日時指定なのだ。そのため、その時間を作らないといけない。
 その時間、いつもは何をしていたかと、改めて吉田は思い出す。時計などあまり見ていないので、正確ではないし、日により、幅がある。きっちり同じ時間とは限らないが、いつものように出掛け、そして戻ってきたあたりの時間が、約束の時間になるはず。
 しかし、その約束を果たすには、戻ってきて、また出ないといけない。だから、戻らないで、そのまま約束した場所へ寄ればいいのだが、日曜なので、いつもの外出先は休みなので、それができない。
 そういう細々とした事情よりも、そういう日があることが鬱陶しい。それこそ足止めを喰らう。当然選択肢はない。明日に延ばせないし、気が向けば、とかもない。
 そして、その日が来て、その時間が迫ってきた。吉田は色々な事情から他には行かないで、部屋にいた。これだけでもいつもとは違う。さらに言えば、前日の夜。くつろげなかった。翌日の予定を考えると、断った方がよかったと後悔するが、その理由がないし、事情もない。
 だが、ポンとできた予定。前日から影響を与えている。そして戻ってからも影響を与えるだろう。
 それが好き好んで立てた予定ならいいのだが、そうではない。
 何でもないようなよくある一日、そういうのが本当は一番いいのかもしれない。
 
   了

 

  


2021年6月23日

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