小説 川崎サイト

 

ナレーション


 今日も日が明け、そして暮れていく。里中は、そんな当たり前のことが頭に浮かぶ。昨日と同じようなことをし、明日も同じようなことをする日々だが、明けたり暮れたりするように、寝たり起きたりするのだろう。
 そのあたり、動物レベルだが、果たして動物が日の出を気にしたり、夕日を気にしたりするものだろうか。
 明るい暗いだけの問題かもしれない。四季の移ろいも暑い寒いや、日照時間や影の長さ程度しか感じていないだろう。雨が降ると、濡れると思うだけ。
 雀も雨ではじっとしているが、小雨程度では飛んでいる。いずれも餌を取りに行くのだろう。だから、何か具多的なことと結びついており、行動に影響を与える程度。
 里中は、そんなことを思いながら、目覚めたのだが、良い目覚めだ。しかし、そんな日に限って途中から調子が悪くなる。逆に目覚めが悪く、身体も重く、元気のない朝ほど徐々に良い感じになるものだ。そしていつもよりも元気に。
 それがあるので、里中は朝の気持ちのいい目覚めを喜べない。経験が邪魔しているのだろう。警告を発しているわけではないが。
 しかし、朝から元気な日は、元気すぎるので、活動的になる。だから、それで疲れやすいだけもしれない。
 里中は目覚め、布団から出るとき、嫌なことを思い出す。一寸気になっていることや、早急にやらないとまずいことなど。
 それを真っ先に考えるので、嫌なことが溜まっている日は、かなり苦しい。先延ばしできることは限界まで伸ばすが、頭の中から消えたわけではない。
 その日は珍しく、そういうのが少ない。あるにはあるが、簡単にできること。これならプレッシャーにはならないので、気掛かりではない。
 それに今朝は調子が良いし、快晴。気分も良い。しかし、そんな日に限って、というのがやはり頭の中にある。別に隙だらけ、油断し放題というわけではないが、転ぶことが多い。
 また、里中に原因はなくても、いきなり何かが起こることもある。外からの原因で。
 しかし、それも、目覚めてから少し立てばもう忘れている。日々のことをやり出すと、一寸引いたところから自分を見るということがなくなる。だから、ナレーションは入らない。
 
   了



 


2021年10月7日

小説 川崎サイト