小説 川崎サイト

 

目からウロコ


 何かもやっとしたものがあり、有村はそれが取れない。一度取れたのだが、またもやっとしだした。
 目が曇っている。目からウロコが落ちたとき、その、もやっとしたものが落ちるのだが、翌朝になると、また、もやっとしている。
 しかし、目からウロコを落とすのは問題だ。落としすぎるとかえってよくない。ある程度枚数がある方がいい。だが落とす方法はなかなか見付からないので、その気になって、さっと落とせない。
 朝、顔を洗うとき、落ちればいいのだが、そうはいかない。
 つまり有村は始終もやっとした状態でいる。これが普通なのかもしれない。目からウロコが落ちるなどは滅多にない。それに落ちても、また何かが付くのか、もやっとした状態にすぐに戻ってしまう。
 だから、目にウロコを付けていて普通で、それが普段の姿だろう。
 もやっとした状態、それは原因が分かっていたりする。しかし、それを解決しても、まだ落ちなかったりすると、これはやはり原因違いだろう。
 そして、目からウロコが落ち、もやっとした状態から消えるのは、特に作為的ではなく、ある日、突然落ちる。手を洗っているとき、ついでに落ちるようなもので、落とし方は実は分かっていない。
 もやっとしたものは継続的に続き、それが普段の状態なので、これはノーマルだろう。また、もやっとしたものが落ちたとき、少し怖い感じがあった。もやもやがなくなり、鮮明になる。この状態がかえって怖い。
 それで、もや落としを積極的にやる気が起こらないのだが、もやっとした感じはやや不快なのは確か。しかし、一寸気になる程度で、それほどの問題ではない。日常を普通に暮らしておれば、それぐらいのことは始終ある。
 人の話を聞いているとき、目からウロコがポロポロと落ちることがある。それ以上落とすと、見えなくなるわけではないが、落としすぎると、今度は溜まる一方になる。
 目からウロコが落ちても、すぐに曇り出すので、心配はないが、次に落ちる間隔が長くなるのが問題。だから落とすのはたまでいい。
 
   了

 


 


2021年10月19日

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