小説 川崎サイト

 

目覚め


 昨日の目覚めと、今朝の目覚めは違う。何かに目覚めたのであれば、それが毎朝変わっておれば忙しすぎるが、その目覚めではなく、ただの寝起き。これは日々変わる。
 夜に寝る時間。何時間かある。決して一日中ではない。それなら、ずっと眠っていることになる。
 眠っている間、それなりに時間は経過している。天気も変わるだろうし、気温の変化もある。特に明け方近くは最低気温が出やすい時間帯。そこを通過する。
 当然夢も見る。見た夢を忘れていることもあるが、何やら何処かが夜勤でもしているのか、頭の中で、ゴソゴソしている。これは警備中ではなく、メンテナンス中かもしれない。または掃除でもしているのだろうか。
 それで、目覚めると、昨日とはまた違う起き方になる。上体を少し上げて手で支え、ぐっと足を、という起き方ではなく、起きたときの気分。その寝起き方、目覚め方が違う。大きく違う場合はそれに気付くが、小さいと、そんなことは考えない。特に注意を向けることではないため。
 作田は起きるとすぐにルームライトを付ける。朝なので、明るいのだが、それでも照明がないと薄暗い。カーテンは閉めてある。
 そのルームライト、ただのスタンド型LED灯。テーブルの近くを後ろから照らしている。このボタンを押すことから、朝が始まるのだが、その僅かなアクションの中にも、動き方の変化がある。
 その朝の作田の目覚めは結構よかった。精気がみなぎっている。つまり元気。これは滅多にない。それに近い日はあるが、どこか都合の悪い箇所があったりする。
 カーテンを開けると、窓から空の一部が見える。晴天だ。秋晴れのいい色をしている。きっとそのためだろう。元気に起きてきても、それを活かしたことをやるわけではない。久しぶりにハイキングにでも出るとか。
 しかし、普段やるような用事を元気な状態でやると、こなしやすい。それなりの快感を得られる。これだけでも元気であるということの恩恵。
 作田はそれで十分。まあ、滅多にないのだから、元気なときは元気がちびないように、大人しくしている方がいい。元気だからこそ何かをやるのではなく。
 そして、翌日は普通。昨日のような元気さは消えている。こちらの方が普通で、普段に近い。そういう日は、普通なので、寝起きが悪い日とかよりも、まし。
 朝の目覚め、寝起きの変化。何故そんな変化があるのか、作田は考えてみるが、操作しようとしても、何ともならない原因もあるのだろう。もの凄く複雑な複合技で、そうなるような気がする。
 しかし、朝の目覚めがいいと、気分がいい。それだけのことで、大した問題ではない。また、気分よく起きられるというのは問題が少ないためだろう。
 
   了

 


 


2021年10月23日

小説 川崎サイト