小説 川崎サイト

 

手前勝手


 世の中にはどちらでもいいのもあれば、どちらも良いというのもある。
 どちらも良くないのもあるが、どちらがましかで少しは優劣が決まる。ましな方を選ぶだろう。
 しかし、それも、どちらでもいいのなら、細かい違いなど考えない。どちらでもよく、何でもいいのだから。
 世の中と言うよりも、これは個人の都合だろう。または好み。世の中では良いものとされているものでも、個人的にはそれほどでもなかったりする。その逆もある。
 世の中を見ている個人の思惑が入るためだ。そして、その思惑も変わったりする。
 結局、いい加減なものだが、そういう加減が加わるためだろう。当然、あまり変わらないものもある。まだまだ良いものとしてあり続けるような。これは先々の保証はないが。
 時代の気分もあるように、個人の気分もある。どちらも変化している。本人が気付かなくても、色々なことを経験していくうちに、そう言う気分になるのだろう。
 ただ、聞いた話とか、本や何かで見たものはあまり身にならない。
 実体験で得たものは記憶に残りやすく、使い回しがいい。
 分かったような気になるのではなく、分かるのだ。しかし、これもあてにならず、分かっていても、何ともならないこともある。
 しかし、聞いた話とか、出来合いのものから得たものよりも上だろう。
 一寸しかない経験でも、ほぼ世の中にあるようなパターンは網羅しているかもしれない。甘いとか、辛いとかのレベルだが。少ない情報でも何とかやりくりしているはず。
 また、世の中で起こっていることは、その末端にも影響を与えていることがあるので、日常の暮らしの中にも入り込んでいる。
 当然、そういうのとは無関係で、あまり変わらないものも多数ある。
 しかし、昔からあるものでも、時代の気分で、受け取り方が違ってくるだろう。そのものの変化ではなく、世の中の人々の変化で。
 別にファッションに拘らなくても、それなりの今風のものを着ている。それしか売っていないためだ。しかし、用途は同じ。以前にあったような服装パターンは同じ。デザインや生地が変わっていたり、重さも変わっている。
 また今まで出せなかった色目も入るだろう。当然、昔は出せていた色なのだが、今は手間がかかりすぎて、遠くへ行ってしまう。
 そういう着るものに頓着しなければ、そんな変化が気分にまで及ばない。また、変化しているのは分かっていても、深く考えない。値段だけが問題だったりすることもある。
 受け止め方は様々だが、これも似たようなパターンを踏む場合が多い。
 あまり興味のないものは見ていない。見えていても無視する。個人的に必要ではないためだろう。当然必要になれば、興味深く見るだろう。
 手前勝手。本音はそこだろう。
 
   了

 



2021年11月18日

 

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