小説 川崎サイト

 

びびり


「そろそろその時期なのですが、如何致しましょう」
「もうその時期か」
「もはや早くはありません。この前は早すぎましたので、しくじりましたか、今なら良い時期かと思われます」
「まだ、早いのでは」
「いえ、今ならちょうど、それを過ぎると、遅すぎるかもしれません。前回は早すぎました。今なら大丈夫です。それを過ぎますと、遅すぎます」
「だから、今なのか」
「はい」
「いつまでならいい」
「はあっ?」
「良い時期はいつまでだ」
「さあ、それは分かりかねます」
「二三日か」
「もう少し長いかと」
「十日程か」
「もう少しは」
「では、ひと月後は」
「微妙です」
「では半月後ならどうだ」
「それなら大丈夫ですが」
「そうだな。準備もあるので、半月後に決めようか」
「しかし、保証はできません。今すぐなら大丈夫なのですが」
「だが、準備が」
「それはすんでおります」
「残るのは」
「あなたの準備だけ」
「私も、それほど時間はかからない。一日あれば」
「手伝いましょうか」
「いや、これは心の準備じゃ」
「あ、さいで」
「その準備、今日中に腹を固める」
「では、明日、決行と言うことでよろしいですか」
「結構じゃ」
「これで、ほっとしました。今が一番良い時期、正直言って半月後でもいいのですが、相手のあること、どう変わるかは知れません。一月後もまだ遅すぎるとまでは言えませんが、心配です。だから、明日なら、申し分ありません」
「では一寸籠もって心の準備をする」
「今からですか。少し決行までの段取りをもう一度確認したいところなのですが」
「長いか」
「いえ、一通り確認してもらえばいいことで、ほとんどのことはこちらでやります。だから、確認だけ」
「どれぐらいかかる」
「夕食までには」
「長いなあ」
「じゃ、簡単にすませます」
「私の心の準備は夕食後だな」
「そうです」
「できるかなあ。少し短い。食べると眠くなるので、心の準備どころではない。おそらく寝る前になる。これは短い。夜中にやることになりそうだなあ。それで心の準備ができるかどうか、心配だ」
「そんな準備はしなくても、実行できます」
「気持ちが乗らないと駄目だろ。それに盛り上がらないと」
「それに関係なく、できます。なぜなら実行は我々がやりますので」
「いや、そうではない。私がそれを認めたということに対しての準備がいる」
「では段取り話はさっとすませます」
「そう願いたい」
「では、簡潔にお話しします。先ずは」
「明日じゃなく、もう一日置いてはどうだ」
「明日に決められたのではないのですか」
「一寸、余裕が欲しい。急ぎすぎじゃ」
「分かりました。では段取りを丁寧に説明できますね」
「うむ」
「先ずは角谷殿が打って入る。残りの二人は隠れています」
「待て、明後日ではなく、さらに一日延ばしたい」
「始まりましたねえ」
「いや、一寸面倒になってきた」
「悪い癖が出ましたねえ」
「もう、そのままでもいいのでは」
「では決行しないと」
「それも考えの中に入れておくべきだ」
「要するに、今回も中止」
「う、うん」
 
   了

 


2021年12月3日

 

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