小説 川崎サイト

 

落ち着く


 落ち着いたものとは、そこで落ち着いたものだろう。そして落ち着いてから少し時が経ったもの。落ち着いた瞬間はまだ落ち着いていない。落ち着いたばかりなので。
 落ち着ける場所だと思い、座ると座り心地が悪かったりする。想像していたのとは違っていたりする。瞬間的に落ち着いた程度ではまだ落ち着いたとは言えない。やはり時、日数。繰り返しが加わらないと駄目なのだ。
 落ち着いたときは落ち着いたことが気にならなかったりする。長くそこでいると、そんなものだが、それを崩すようなことが起こった時、今まで落ち着いていたと言うことが分かったりする。
 いくら落ち着いていても、それなりに変化があり、落ち着かないこともある。それは瞬間だったり、少し続いたりするが、そのうち波が静まり、いつもの落ち着いた感じに戻ることになる。戻らない場合もあるが、座り方を変えれば、何とかなったりする。
 落ち着き具合や、落ち着き方というのも徐々に変わっていく。色々なことがそれなりに落ち着くのだろう。
 落ち着けないことが起こると落ち着けない。あたりまえの話で、冷静さが損なわれる。そんな状態のときでも、落ち着いていられる方がおかしい。やはり心は動揺するだろう。また面倒なことをしないといけない。だが、そういうことが治まれば、また落ち着きを取り戻せる。
 だが、以前は落ち着けていたのに、そこに戻ったのに、落ち着けなかったりする。それでまた落ち着ける工夫をするのだが、完全無欠ではない。鉄壁ではない。
 落ち着くと、そのうち飽きてきたりする。落ち着きすぎたためだ。それで刺激が少し欲しくなる。それをやると、落ち着かなくなることが分かっていても。
 長く落ち着いていると、そんなものかもしれない。だから、何度も落ち着きを失い、何度も落ち着けるようになり、また、それも長持ちしない。完全型はないのだ。
 完成品があれば、その人はそこで終わってしまうが、そうならないのは、完成しないためだろう。
 どちらにしても少し慌ただしく、乱ペースのように思われるとき、落ち着きが欲しくなる。その繰り返しをやっている場合、落ち着きがないことになるが、元々オチはなかったりする。
 
   了

 



2021年12月21日

 

小説 川崎サイト