小説 川崎サイト

 

野暮用


 毎日やっている野暮用。一時間ほどで済むが、一時間もかかる。しかし、雨の日はできない。それで一日遅れる。
 宮田はその日は寝坊で遅起き。そのため、その野暮用をやる時間がない。いつもは夕方前にやる。遅起きだと、既に暗くなってしまう。だから、できない。
 その野暮用は長期。ひと季節ほどかかるだろう。一日サボったからといってどうということはない。しかし、進展が止まる。一歩でもいいので、先へ進む方がいい。急がなくてもいいのだが、急いでいる。長期戦なので、暇なときにやればいいのだが、そんな時間はない。暇なときは好きなことで時間を使いたい。
 その野暮用、嫌仕事なのだが、やっているときはそれなりに面白さがある。少しずつ開けていくためだ。片付いていく。成果は目で見て分かるので、やりがいがある。しかし、何もしない日は、そのまま。これがやはり気になる。
 宮田はサボったことで、罪悪感を覚えることもある。その後、夕食を食べるのだが、野暮用を果たしていないと、威張って食べられない。
 夕食を威張って食べる。どんな食べ方だろう。働かざる者、食うべからずで言えば、野暮用で働いたのだから食べる権利があることで、威張れるのだろうか。威張るよりも誇れる方がいいのだが、夕食を誇りを持って食べるというのも、妙な食べ方だ。
 宮田はまた、寝る前、布団の中で今日はあれをした、これをした。あんなことがあったなどと、思う。野暮用をやっていない夜は、少し寂しい。少しでも成果があったことを思い出したいのだ。
 それで、野望用の続きをやっていない日は寝付きが悪いわけではないが。
 これは気持ちの問題だけではなく、野暮用が遅れるとそなりの支障は出る。その支障、支障だけに気分のいいものではない。上手く行っていないことが増える。上手く行かなくても、それなりにやっているだけでもいいが。
 しかし、その日は寝坊で、野暮用ができないことは昼頃に分かったので、ほっとする。今日は休めると。
 無理にサボったわけではない。寝坊とか、雨とかではできないため。
 夕方にやるのだが、寝坊でも昼にやればできる。陽はまだ高い。しかし、それがメインになってしまう。あくまでも野暮用扱いのままがいい。
 宮田がその野暮用をやっているときは、結構気合いが入り、真剣になる。おそらく一日の中で最大の。だから、活気がある。さらに熱中できる。
 そのため、嫌ごとだと宮田はいっているが、本当は好きなのかもしれない。
 今日は野暮用を外した。やっていない。そして夕方になった。そして暗くなりだした。いつもなら野暮用が終わった頃だろう。それなりの充実感を得て。
 野暮用なので、やり残した仕事というわけではないが、何故か物足りない一日になる。
 サボりたいと思っていることほど、やると充実するものだと、宮田は教訓を得ているのだが、充実という期待感がプレッシャーになる。
 また、うまくいかない日もあるので、やってみないと分からない。
 野暮用。それは曖昧さのある用事に多いようだ。
 
   了



2021年12月22日

 

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