小説 川崎サイト

 

内と外


 みぞれ混じりの雪か雨。どっちだろうと高岡は考えた。俄雨らしいことはすぐに分かったのは、雲が見えているため。大陸ほどには広くはないが、輪郭が見えている。青空にその暗黒の大陸。これは大きな雲なのではなく、下に来ているためだろう。
 その雲が真上にまで近付いて来る。今よりも降りが激しくなるかもしれない。
 雨だと思ったのだが、白いものが混ざっている。雪が雨の中に混ざっている。これをみぞれというのだろうが、雨の方が勝っている。雪は少ない。
 やがて、雨だけになるが、雪が混ざるほどなのだから、結構冷たいし、寒い。手も悴む。みぞれの方が雪よりも冷たく、また寒く感じるのかもしれない。少なくても雨だけよりは冷たい。
 やはり俄雨だったらしく、すぐにやんだが、上にまだ雲がいる。もう降らすものがなくなくなったのだろうか。
 それを見ていると、いつの間にか雲の輪郭がなくなり、空が灰色がかった白いものに覆われる。先ほどまであった青空を塞いでいる。蓋をされた感じだ。
 これを上空から見れば、つまり、その雲の上から見れば、どんな感じだろう。おそらく雲の下は見えないだろう。
 上空で音がする。ヘリコプターだ。報道ヘリだろうか、獲物を狙うように旋回している。たまに止まる。
 何か事件でもあったのだろうか。だが、殆どの事件はローカルニュースでも見ないと、何があったのかは分からないまま。
 ただ、音だけがうるさい。
 というような情景は高岡にとり、初めてではない。始終あるわけではないが、生まれて初めて見る光景ではない。
 そのため、謎として追究するほどのことではない。空模様の変化は事件ではない。報道ヘリは事件性があるかもしれないが、別の目的で飛んでいた可能性もある。
 それよりも上着と帽子、どちらも濡れた。ズボンもそうだ。靴は大丈夫なようだ。
 びっしょぬれではない。すぐに乾くだろう。それよりも指先が悴む。早く戻りたい。真冬の空の下、用もないのにウロウロするものではない。
 しかし、部屋に戻ると、暖房を付け、いつもの場所に座ればほっとするだろう。これがやりたいばかりに外に出て、そのへんを自転車で一周してきたわけではないが。
 これは日課なのだ。真冬でも真夏でもやっているが、寒いだけ、暑いだけの日もある。
 外あってこその内。内あってこその外。と、高岡は呟いた。言ってみただけで、内実があるわけではない。
 
   了

 

 

 


2022年1月22日

 

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