小説 川崎サイト

 

寒波襲来


「明日から寒くなるらしいですよ」
「また、寒波ですか」
「今冬最強とか」
「寒波が来るたびに、そう言ってますねえ」
「冬が深まるほど寒くなるので、寒波も強く感じるのでしょ」
「そうですか。天気予報、有り難うございました」
「私は明日仕事を休みます」
「外でのお仕事ですか」
「屋根がないところなので」
「雨か、雪が降ると屋外じゃ、きついですからねえ」
「寒いだけで、充分です」
「なるほど」
「明日は寒いとなると、もうやる気が失せます。それで、やる気がないまま、作業を始めても、事故の元ですからねえ。嫌々ながらやるのでは」
「そうですねえ」
「丁度休みたかったので、いい案配です」
「理由になりますねえ」
「しかし、作業が遅れますので、そこが苦しいところですが、寒いですからねえ」
「今日は穏やかでいい日和なのですがねえ。本当に明日大寒波が来るのですか」
「天気予報で言ってました」
「もし、そんなもの、聞かなかったりしたら、どうですか」
「明日も仕事、やってましたでしょうねえ。また、明日、休む気などないので」
「じゃ、余計なことを知ったようなものですか」
「さあ、どうでしょう。しかし、これは休めるぞと、思ってしまったので、これは問題かもしれませんよ。知らなければ、たとえ寒波で寒いが、雪が降ってくれば、途中でやめるか、または合羽を着て頑張ったかもしれませんよ。折角やり始めたのだから、それなりの成果を出してね」
「じゃ、知らなかった方がよかったかもしれませんねえ」
「まあ、そういう面もあります。休む理由が出来たので。でもその程度では普通はやりますよ。寒いぐらいでは」
「何でしょう」
「サボる理由が欲しかった。それだけかもしれません」
「天気予報、外れて、それほど寒くもなく、雨も雪もなかったとすればどうします。明日」
「それはないです。天気予報、よく当たります。それに寒波が来ているのは確かなので」
「そうですねえ」
「どうします」
「何が」
「だから、明日、天気がそれほど悪くなければ」
「うーん。予報が当たることを祈っています」
「天気が悪くないのに、休むことになりますが」
「天気は崩れなかったが、体調が崩れた。これで逃げます」
「あ、はい」
 
   了



2022年2月18日

 

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