小説 川崎サイト

 

よく休む人


 疋田は今日は体調がよくないので、大人しくしておこうと考えた。
 そういうことを始終やっている。これは仮病ではない。生身の人間なので、調子の悪いときもあるだろう。そんなとき、頑張って仕事をすれば、それなりの達成感が得られるかもしれないが、身体がえらい。
 無理をしてでもやりたいことなら良いが、あまりしたくない用事などは、積極的にはやりたくない。しかし、そういう地味なことをこなさないと、溜まれば辛いことになる。
 それを、有為なことをやったということで、ご飯も食べられる。これは体を使ったので、腹が減り、ご飯も多く食べられるということではない。
 働かざる者、食うべからずの教訓が疋田の中では生きており、遊んで一日を終えると、充実しない。坊主では。
 この坊主とは一匹も魚が釣れなかったこと。雑魚でも何でもいいので、釣れた方がいい。それが成果だ。
 これで、ご飯が食べられる。ただし、その雑魚を売ってお金に換え、ご飯が食べられるようになるわけではないが、多少の足しにはなるだろう。
 そういった精神状態が、いつ頃から出来たのかは分からない。怠けていると、ただのただ飯ぐらい。これはやはり威張ったものではないし、気も引ける。
 居候、三杯目はそっと出しというのがある。ご飯のお代わりだ。二杯目だったのかもしれないが、茶碗の大きさにもよる。ただ、一杯でいいだろう。
 これも気兼ねしながら、そっとご飯を催促している。だから気兼ねなく食べられない。それが食費を払っている居候ならいいが。
 そういうことを考えながら、疋田は今日は休むことにした。目的は大人しくしていること。だから、寝ていてもいい。余計なことをして、二度手間になるより、休んでいた方がいい。
 それと花冷えで、少し寒い。テンションも下がっている。覇気や精気もない。こういうときはエネルギーを溜める方がいい。休めば活力も戻るだろう。
 と、いうのは疋田だけの考えで、それが世間で通らないことも多い、疋田は仕事人だが、仕事場で、その仕事人だけの機能を使っているのだが、実際には生身の人間。痛い痒いがある。そういうことは個人の健康管理の問題で、それが出来ていない人に見られるのが嫌なのだが、最近は開き直ったのか、一寸しんどいと休むことにした。微熱や腹具合が少し悪い程度でも。
 しかし、それで評判も下がったのだが、逆に休みや遅刻、早退をやりやすくなった。
 疋田がそれを望んでいるのではなく、体が、そう望んでいるのだろうと、勝手に解釈して。
 
   了

 


 


2022年4月18日

 

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