小説 川崎サイト

 

石仏の妖怪


 大都会の中にある町。地下鉄が張り巡らされ、交通の便はいい。何カ所かに大きな町があり、高層ビルが建ち並び、人も多いが、そこに住んでいる人は意外と少ない。
 商家や長屋があった場所も、当然大きな建物に変わっていたり、ビジネス街や繁華街になっている。
 大都会の片隅というよりも、あまり開発が来ていない一角がある。そこには昔から住んでいるような人がいるのだが、町家ができた頃からだろう。
 その、ちょっと外れにある町も、その入口は地下鉄や在来線の駅もあるので、当然建て替えられ、今風なショッピング街になっている。
 そこからさらに離れた場所に、その寺がある。お隣の町との境界線あたりで、ここは土地の人ぐらいしか行き来していない。かなり奥まった場所にある。
 そして丘陵と言うほどではないが、起伏があり、開発しにくい場所。それ以前にここに何らかの施設を作っても人は来ないだろうという予測もある。だから、手付かず。
 その寺は石仏の墓場とされている。方々で開発が進んだとき、お地蔵さんなどが邪魔になるので、ここに持ち込むのだ。まさか壊すわけにはいかない。
 また、地下鉄工事などでも、石仏が出てくる。もう謂れも何もかも忘れられ、お参りする人もいなくなった身元不明の石仏。そういうのが、その寺に持ち込まれ、無縁仏とされた。人ではなく、仏像。
 流石に石饅頭レベルの物は、漬物石扱いで、ただの石として扱われるが、何か人工的な手が加わった石饅頭は、それなりに扱われる。そういうものがこの寺ではゴロゴロしている。
 びっしりと詰め込まれ、重なり合い、下手をすると下敷きになっている。ただ、数が集まると、その密度で怖い。何か出そうだ。
 妖怪博士は、たまにその寺に来て、そういう物を見て回る。
 こういった石仏が化けて妖怪になるところを見に来ているわけではない。だが、物には何かが宿りそうな雰囲気があり、その感じに接したいだけ。
 それらの石仏。最初は関係する物が入っていたのかもしれない。既に抜けてしまい、別のものが入り込んでいたりする。
 やはり、こういうものは、人に見られていくらではないかと思われる。そうでないと、入っている何かも、張り合いがないだろう。
 
   了



2022年6月5日

 

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