小説 川崎サイト

 

伸び代


 期待していたものが期待通り来た場合は良い。
 ただ、期待外れになると思いながらも期待していたことが、やはり外れていたこともある。だから期待外れを期待していたことになりかねないが、本当は期待していたのだ。
 しかし、もうそれには期待出来ないのではないかと思うようになっていたので、外れても、やはりそうか、となる。まるで期待外れを期待していたように。
 それまでは疑いようがないほど手放しで期待していた。そして殆どが期待以上。これは満足度が高い。すると今度は期待以上のものを期待する。すると見事に果たしている。
 だが、そんなことが長く何度も続くとは思えないので、そろそろかな、というのもある。
 ある程度、限界があり、それ以上のものは期待出来ないためだ。その限界点は結構遠いので、そこに近付くまでには何段階かあるため、すぐには限界越えはしない。
 小出しに出しているようなものだが、同じレベルのものの横並びでも、それなりに満足度はある。前回と同じレベルなら、期待通りとなる。
 ただ、それが下がり出すと、期待外れになり、期待する圏内から消えてしまう。
 毎回毎回同じような展開にしかならなくても、下がらなければ良いのだ。別に期待以上のことを望んでいない。
 いつまでもその現状を維持しているだけで、充分だろう。期待以上の大きな期待はしない。期待を外さないだけでも充分だろう。
 限界まではまだまだ遠く、低いレベルであっても、徐々に徐々に上がっていく状態も良い。これも期待出来る。前回よりも上がるので。ただしレベルは低いが。
 まだまだ上への余裕があり、要するに伸び代が充分ある。だから、この場合、前回よりも上がるので、期待以上となるが、期待しているものが小さいため、そのパターンもあり得る。
 危ないのは、限界すれすれのところにまで上り詰めた場合、もう上はないので、横へ行くしかない。それでも落ちないよりはいい。
 だが、それもいつかは飽きてくる。レベルは落ちていないのだが、新鮮さがなくなるため。そして、その先が頭打ちなので、新たな展開も望めない。
 ただ、横への展開はあるが、これも余計なことをしない方がよかったりする。いつもと同じものを繰り返している方が、まだ無難。
 大きな展開はないが、小さなところでの変化などがある。それがあると、飽きも緩和する。
 念仏は変えてはいけない。しかし唱え方なら、変えてもいい。節回しとか、喉の使い方など。
 もう限界に達した場合でも、小さいが、それなりに伸び代は残っている。
 
   了


2022年6月14日

 

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