小説 川崎サイト

 

朝のスポット


 浅田は朝食を食べ過ぎた。それほどの量ではないのだが、アジのフライが効いたのだろうか。その他にも色々と食べたのだが、野菜が多い。
 朝食後、散歩に出たのだが、ペダルが重い。歩道では歩行者に追い越されるほど。しかし、歩くよりも自転車の方が楽。座っているし。
 散歩なので適当でいい。目的地はないし、時間的制約もない。そのため、約束の時間へと向かっているわけではないので、何とでもなる。しかし、いつもの散歩コースを毎朝なぞっている。
 何処を通ってもいいし、何処へ行ってもいいのだが、市バスのように、同じような箇所。そしてバス停のように、止まる箇所がある。止まらないまでも、ゆっくりと見ながら走る。これは見所で、注目ポイント。
 観光スポットではないが、花壇の花の変化などを見ている。普通の家の塀沿いとか玄関口、門の左右とか、個人の家で、個人が育てているもの。これが季節ごとに変わる。
 この時期なら、これ、という花が咲いているのだが、なかには今まで見たことのない花もある。そういうのを仕込んだのだろう。活発だ。
 また空き家の玄関先や庭沿いにも花はある。これはもう植える人がいないのだが、勝手に咲いていたりするが、草が圧倒的に多い。
 葉だけが目立つ草だが、それなりに花を咲かせているのもある。しかし、茎や葉などの方が、見応えがあったりする。ただ、観葉植物として売られているレベルではない。生えれば抜かれるような草だ。
 浅田はそういうスポットをバス停の数ほど持っている。花だけではなく、建てかけの家とかもある。これは立ち止まってまでは見ないが。
 さて、それよりも今朝は食べ過ぎた。そちらの方へ意識が行く。食べ物の通り道。喉や食道や胃。これも道だろう。
 しかし、以前は夕食でアジのフライを食べきるまで往生した。それに比べると、今朝は簡単に始末した。
 だが、胃の中での始末が悪いのか、体が重い。血がそちらに大集合しているため、足に回る量が少ないのだろう。
 食べ過ぎたときは腹減らしに運動するのがいいと聞いていたので、それをやっているのだが、自転車でとろとろ走っているので、運動とは言えないだろう。
 しかし、しばらく行くと、少し楽になった。次のポイント地点は信号待ちの場所。これは嫌でも止まらないといけないことが多い。今朝は赤。スカだ。待たないといけない。青で渡れる日もある。半々かもしれない。
 ただ、青なのに黄色にすぐに変わることもある。そこからの待ち時間が一番長い。だから赤の状態で交差点に近付くと、青になる寸前の赤だと、早い。待ち時間は殆どない。同じ赤でも違いがある。これを浅田は毎朝見ている。今朝はどうかと。
 その他にも色々とあるのだが、もう見なくなったスポットもあれば、新たに出来たスポットもある。何処にも掲載されない浅田だけのスポット。その規模の話なので。
 第六スポットに差し掛かったとき、食べ過ぎの影響から解放されてきた。ペダルが少し軽くなった。
 
   了

  




2022年8月28日

 

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