小説 川崎サイト

 

中間のもの

 
「大きすぎず、小さすぎないものはないかね」
「その中間ですね。でも中途半端ですよ」
「帯に短し、襷に長しか」
「はい」
「でも、あるのだろう。その中間のものが」
「ありますが」
「ではそれを頂こう」
「でも、ちょうど中間というのはないのです。少し小さい目とか、小さいのですが、少し大きめとか」
「面倒だねえ。重いのではなく軽いのが良いが、軽すぎない方が良い。だから中間で良いんだ」
「どの程度の中間でしょうか」
「まあいい。説明が面倒だ。それに使ってみないと分からん」
「大きいのはあるのですか?」
「あるが、大きい。だから不満だ」
「小さいのは」
「それもあるが、小さくて頼りない」
「分かりました。値段の方は良いのですか」
「何が良いのだ」
「値段は気にしないと?」
「高すぎず、安すぎずがいい。高すぎても、無駄に高いだけもあるし、安すぎると、安かろう悪かろうの場合が怖い」
「はい、分かりました。それで、どの程度のものがいいのでしょうか。これも中間ですか。でも大きいのには付いていますが、小さいのには付いていません。中間のものは付いているものと付いていないものがありまして、それで大きさも変わります。中間でも大きい目の中間というのはそういう意味です」
「面倒だなあ」
「まあ、目的にもよります。いらないものが付いていたりすると、邪魔なだけで、値段だけは高い、となります」
「目的か」
「はい」
「まあ、ほどほどの目的だな」
「え、目的にほどほどというのがあるのですか」
「だから、大した目的などなく、そこそこのことが出来ればいい」
「そこも中間なのですね」
「そうだ」
「中間にも色々とありますので、意外と難しいのです。極端に大きいものや極端に小さいものなら分かりやすいのですがね」
「それはもういい。ちょうど間ぐらいなので、充分なのだ。これならあるだろ。いくらでも」
「では、一番中間に近いものを中間の中から探してきます」
「頼むよ。面倒な説明など聞きたくないから」
「はい、整うまでしばらくお待ちください」
「よし」
 
   了





2022年11月9日

 

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