小説 川崎サイト

 

怪しい探検

 
 高橋は怪しいものを見付けに、ウロウロするのが趣味だった。仕事ではないので、別にやらなくてもいいこと。
 しかし、最近は以前ほどには怪しいものがない。近所のものは殆ど使い果たしたというより、新たな発見はない。
 それで一寸離れた近場へ出たのだが、最初のうちは色々な発見があった。初めて遭遇するものなので、新鮮。しかし、それも徐々に減り、もう少し遠くまで出ることになる。
 流石に遠出の甲斐あって、新たなものや違うものを発見し、これは時間を掛けて移動したことでの見返りだ。
 この遠出、ワープに近く、ピンポイント。その町のほんの一部を探索しただけ。そのため、同じところだが、少しだけ別の場所を探索した。
 これは前回の続きのようなものだが、一度目に降り立ったときの新鮮さは消えている。一回目と似たようなものなので。
 しかし、近場をウロウロしているよりも収穫は多い。
 一番いいのは見知らぬ町に降り立つこと。これなら全面積、全マップ、新たなものなので、全部が全部新鮮かと思いきや、そうでもない。他の町でも見かけたものがあったりし、その組み合わせが違うだけのこともある。
 また時代と共に、消えてなくなった建物もあり、それはどの町でも同じようなもので、減り続けている。
 逆に最近できたものが目立つ。どの町でも。
 そういうのは高橋の近所にいくらでもある。わざわざ遠出して見に行く必要はない。それに、そんなものを見たいわけではない。実は見たくないものだろう。敢えて見ようと思わなくても、普段から目に入っている。探す必要もない。
 それで、高橋は遠出にも飽きてきた。
 遠出の条件は日帰り。勤め人のためだ。場合によっては一泊してもいいが、そこまで遠くは最初から考えていない。
 一番いいのは半日で行って帰れる場所。午前中とか、午後だけで終わるような。朝から夕方までかかる場所だと、流石に間が持たない。
 それに怪しいものなど、早々見つかるものではない。しかし、探している過程も楽しい。何かありそうな雰囲気がしたときのわくわく感。そのものよりも、その手前の方が楽しいようだ。
 しかし、よく考えてみると、もう充分怪しいものを探し出し、怪しさの快感を得ていた。
 だからこれ以上増やすのは難しい。殆どが知っていることや、似ていることばかりなので。
 新鮮な驚き。それは初めてでないと駄目だし、今まで見たことがないものでないと、駄目なようだ。
 経験を経ることで、鮮度が落ちるようで、そのことに高橋は気付いた。
 それで最近は怪しいものを探す探索方ではなく、ただの散歩になった。
 
   了

 


2023年2月12日

 

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