小説 川崎サイト

 

元気の出る特効薬

 
 低調なときがある。朝からそんな感じだが、寝る前からそんな感じだった。
 時田はそれで元気のない朝を迎え、そのまま低調なまま過ごしていた。別に寝込んでいるわけではなく普段通りのことをやっているのだが、あまり調子は良くない。といって出来ないわけではなく、一寸張りがない。張り切った何かが。
 こういうとき、元気になるような方法がある。元気なものに触れることだ。だが、元気のないときは、その元気もないのだが、時田はそこまで低調ではない。しかし、それをやると元気になってしまう。これは考えものなのだ。
 調子の悪いときに元気なる。回復するのではなく、これは空元気。そんなことで回復するわけではない。
 そのため、元気のないときに元気の出ることをしても、あとで疲れ、その元気注射のようなものが切れたとき、余計にしんどくなる。つまり調子がさらに悪くなったりする。
 それで時田は元気のない日はそのままにしている。これはこれで悪くはない。元気がないので静か。意外と冷静に物事を考えられる。浮ついていない。
 この調子の悪さは、そのうち治るだろう。治ったときは調子のことや元気がどうのなどは考えないので、治ったことも気付かかったりする。
 時田の場合、それは自然に治るのだが、かなり長引くこともある。この場合、慣れで何とかなっているようだ。そう言うものだと。
 しかし、元気のない日の方が妙に落ち着く。動きもゆっくりとなり、丁寧になる。これは悪くないのだ。状態は悪いが。
 時田はたまにそういう日があり、これは元気のお休み日。元気もたまには休ませないと、故障するわけではないが。
 これは本当に体調が具体的に悪い場合でも、そのうち治っていることもある。
 さて、調子の悪いとき、無駄なことを結構やっていたことに気付いたりする。そういうことを見直すいい機会だ。
 ただ、調子が戻ると、また無駄なことをやってしまうが。
 
   了


2023年3月10日

 

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