小説 川崎サイト

 

桶屋が儲かる

 
 まるで最初からそうなるように決まっていたような結果になることがある。これは心配していたことが上手く行ったとかならいいが、上手く行くと思っていたことが失敗に終わることもある。
 最初からそういう話が出来ているのなら、そこで何を思おうと同じことだが、そこで思い直して、別の行動を取ることも出来る。それも含めての筋書きだったりすると、一寸妙な感じになるが。
 ではその筋書きを書いている人がいるとすると、それは誰だろう。本人一人だけの世界ならいいが、相手がいたりすると、全体の筋書きを書いている人がいるはず。それは人かどうかは分からないが。
 三浦はたまにそれを考える。これに対して、誰かがそのことを言っていたはずなので、それを思い出すと、成るように成るというのが近かったりする。
 つまり、成り行きなのだ。そういう流れで、そうなると。
 では弄れないのだろうか。しかし弄ることも流れの中に入っていたりすると、何とも言えなくなる。
 そのあたりは、あまり気にならないが、出来すぎた展開になることがある。偶然だが、偶然とは思えないような。
 しかし、それなりに因果関係はある。それを言い出すと、こじつけも多い。風が吹くと桶屋が儲かるというたとえがそうだ。
 順番の一つ一つは可能性としてある。風が吹くと目にゴミが入る人がいて、目が悪くなり、見えなくなる。
 ここから始まる。それが三味線弾きになり、猫に行き、猫が減り、鼠が増える。鼠が桶を囓り不足する。
 自然現象の風や物理的なものや、動物まで含まれる。それらは確率としてあるのだが、その並びは奇跡に近い。
 桶は別のことで傷んだりするだろう。桶が壊れ、桶が足りなくなれば、桶屋が桶を多い目に作ることになるが、鼠が多いと、他の需要も出てくるだろう。そちらも儲かるはず。また、損をする人も出てくる。
 最初の原因は風が吹いただけ。バタフライ効果のようなもの。
 これはとんでもないところに回り回って、そうなるという頓知話なので、奇抜な方がいい。
 桶屋が怪我をするでもいい。急いで作りすぎて、手が滑ったとか。
 これはよくできた話ではなく、できすぎた話なので、三浦の考えているものとは一寸違う。
 こじつけではなく、もっと自然な成り行き。
 また、成るようにはなると言っても、どうなるのかまでは分からない。成ってみないと。しかし、そのあとの展開もあり、そこで終わるわけではない。
 この筋書き、あとで三浦が書いているのかもしれない。
 
 
   了


2023年3月12日

 

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