小説 川崎サイト

 

それ以上のもの

 
 それ以上のものを望むのではなく、それ以下のものでも結構良いものがあったり良いことがあったりする。これは安上がりでいい。
 それ以上のものには限界があり、それ以上は頭を打つ。青天井ではない。またそれ以上のものがあったとしても、これは同じようなものになってしまう。
 ある限界があり、その手前あたりまでの競争のようなもの。ここには色々なものがあり、アタックの仕方が違う。
 しかし、限界内での話。限界を超えると同じようなものになるので、その手前でゴチャゴチャと創意工夫をこらした方がいい。芸はそこにある。
 そういった最先端のものではなく、それ以下にも、結構色々とあり、こちらの方が豊か。
 本来のもの、そのものへ向かっているのだが、それを諦め、別のことに横滑りしている。上へ行かないのだ。
 メインではなく、サブのようなものだが、そのサブも立派なメインとなる。そこでは完成された世界がある。
 一方本来のメインは、限界があるので、完成することはない。その手前で過不足なまま。
 限界手前での競い合いの方が、何処までやるのかと期待は大きい。
 しかし、もうそれほど期待出来ない場合、それ以上ではなく、それ以下の世界に戻った方が、選択が多くなる。上へ行く程少なく、下へ行く程多いのだ。
 それ以下のもの。これは何処を基準とするのかにもよるが、今まで通過してきたものがそれ以下のものだろう。それ以上のものに比べ、弱いとか大人しいとか。
 しかし、それ以下のものの中には、それ以上のものに匹敵する箇所もある。それ以上のものにはないものが含まれているのだ。それはそれ以上になると失うものができるためだろう。
 たとえば初心者の溌剌とした感じとかがそうだろう。若いか年寄りかの違いのようなもの。
 今までそれ以上のものを望み、進んでいた場合でも、それ以下のものにも良さが見出されることがある。
 そうなると、それ以上のものを目指さなくても良くなったりする。
 限界の向こう側は普通になる。その手前がいい。それ以上のものが目指しているものとは違うものがあるためだ。
 ものだらけだ。
 
   了

 


2023年4月11日

 

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